ウクライナが防衛から攻撃に転じ、ロシア領内に侵入すると、中欧諸国はまたもや頭を抱えることとなった。ウクライナ軍が8月6日、ロシア西部クルスク州に奇襲攻撃をしたことで、中欧へのロシア産天然ガスの供給停止や、それに伴う影響への懸念が再び高まったからだ。
ロシア産天然ガスの欧州向けパイプライン輸送契約は今年12月で終了することになっているが、現時点ではウクライナを通過しながら輸送が続いている。年間の輸送量は140億~150億立方メートルに上る。主な供給先は、スロバキア(年間65億立方メートル)、オーストリア(同60億立方メートル)、ハンガリー(同10億立方メートル)だ。これら内陸の3カ国は、今年末に迫るロシアとの契約終了を見据えながら代替供給源の確保に奔走する一方で、暫定措置としてロシアに天然ガス料金を同国通貨のルーブルで支払うことにさえ同意した。
ところが、ウクライナ軍が8月7日、自国との国境に近いロシア西部スジャのガス測定所で戦闘を開始したことから、欧州向けのガス供給は今年末の契約終了を待たずに打ち切られる可能性が出てきた。実際、これ以降、ロシア北中部のウレンゴイ・ガス田から西部ポマリを経由しウクライナ西部のウジュホロドに向かうパイプラインで輸送された天然ガスは12%減少している。中欧諸国は依然としてロシアからのガス供給に依存しているため、これは看過できない事実だ。