経営・戦略

2024.09.19 13:30

ドコモとの提携で得るものとは、マネックス清明祐子の未来戦略

清明祐子|マネックスグループ取締役兼代表執行役社長CEO

やめるべきものをやめる

清明の意思決定はとかく大胆さに目を奪われがちだが、決断・実行に至る過程は実にシンプルだ。彼女は19年のマネックス証券社長就任を皮切りに、22年にマネックスの共同CEO、23年のCEOへの昇格と、経営の中枢でかじ取りを担ってきた。その間、経営トップとして意識してきたことは、おおまかに1.明確なゴールの設定、2.ゴール到達までのマイルストーン設定、3.ゴール達成まで執念深くやり続けることの3点だったという。
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マネックスは21年に上記の経営理念へ刷新。このゴール到達に向けたマイルストーンを設定し、実行していく段階で清明が最も重視したのは「やめるべきものをやめる」ことだ。人的資源も資金も限られるなかで、その対象はサービス、M&Aで得た会社などすべて。23年は大手企業との提携のインパクトが目立つ年だったが、実は「入れ替えるべきものを入れ替えた1年だった」という。今年6月には10年に買収した香港ネット証券の売却を決めた。「よくある話、ファウンダーがつくってきたものを自分でやめるのは難しいし、後継者も気を使ってやめることを躊躇しがちになる。その状況で新しいことを始めようとすると、(組織として)どんどん複雑になっていく」。

カリスマ創業者からCEOを引き継ぐという特殊事情があっても、清明は揺るがない。理念への到達こそが最重要課題であるという思いに一切のブレがないからだ。マネックス証券社長の就任時には、「松本大のマネックスから、私たちのマネックスへ」と高らかに掲げ、未来は自分たちがつくっていくという自負を社員に植え付けていった。清明は資本コストを意識した経営判断を下し、その意思は執念深くやり続けるという社員一丸となった行動に行き着く。そして最後は「数字にこだわる」。こうした経営判断と行動意識が、課題を乗り越えていく大きな要素になっている。

「CEOのやるべきことは、中長期的に企業価値を伸ばしていくこと。それしかないと思っています」と清明は言う。KPIとしてとらえているのが株価だ。ドコモとの資本業務提携を発表した23年10月4日時点のマネックスの株価は559円。提携発表をきっかけに上昇基調を強め、一時は972円と1.7倍にまで跳ね上がった。
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しかし、買い一巡後の株価は伸び悩む展開で、今年6月末時点の終値は727円。高い水準を維持しているが、高値(972円)からは2割強下がった。ドコモとの提携効果はこれから表れることが期待される材料とあって、いっときの熱狂から覚めた投資家は提携に伴う利益貢献の確度がどれほどか見極める段階に移行している。

「どうやって企業価値を上げていくかを日々追求する。株価を意識しない日は一日もありません」。理念に到達するサービスの積み重ねこそが、同社を次のステージへと引き上げる起爆剤になる。


せいめい・ゆうこ◎三菱UFJ銀行、MKSパートナーズを経て2009年マネックス・ハンブレクト入社。同社社長の後、19年マネックス証券社長。20年マネックスグループ代表執行役COO、21年代表執行役COO兼CFO、22年代表取締役兼代表執行役 Co-CEO兼CFO。23年より現職。

文=荒木 朋 写真=ヤン・ブース

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