なぜだろうか? 売られた理由はいくつかある。まず、Q2の売上総利益率が64.9%と市場予想の65.4%を下回ったことや、既存店売上高の成長率もQ1で見せた21%という高い数字には届かなかったことなどが挙げられる。さらに、同社はQ3の営業利益率が13~14%の範囲になるとの見通しを示しており、今回発表されたQ2の15.5%から低下している。つまり、黒字を維持するものの、成長率は鈍化すると同社は予想しているということだ。
とはいえ、アバクロの米国時間9月2日現在の株価である142ドルは、私たちが算出した目標株価の154ドルより約8%低い。私たちはこの目標株価を、2024年度の予想年間EPSである9.86ドルに15.6倍のPER(株価収益率)を掛け合わせて算出した。また、アバクロの2024年度の年間収益は、前年度比13%増の48億ドル(約7031億円)になると予想する。アバクロが今回好調な業績を見せたことや、通期の業績ガイダンスを引き上げたことは株価には反映されていないように見える。
株価パフォーマンス
アバクロの株価は、2021年1月上旬につけた20ドル台から、現在142ドル前後の水準まで約575%という極めて力強い上昇を見せている。過去3年それぞれのリターンを見ると、2021年は71%、2022年はマイナス34%、2023年は285%だった。これに対し、S&P500種株価指数のリターンは、2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、アバクロのリターンは2022年にS&P500を下回っている。直近の業績動向
アバクロのQ2における売上高は、既存店売上高が18%増えたことに牽引され、前年同期比21%増の11億3000万ドル(約1655億円)と大幅な伸びを示した。優れた販売価格管理と適切な品揃えが功を奏した形だ。ブランド別の売上に関しては、Hollister(ホリスター)が前年同期比17%増となり、社名を冠したブランドであるアバクロンビー&フィッチは同26%増だった。収益が堅調に成長していることと、売上総利益率が2.4ポイント改善し64.9%となったことにより、営業利益率は前年同期と比べて5.9ポイント改善した15.5%となった。その結果、調整後のEPSは2.50ドル(前年同期は1.10ドル)だった。特筆すべきは、アバクロは数四半期連続で成長トレンドを維持しており、ブランド個別で見ても、例えばホリスターは5四半期連続で売上高を伸ばしたことである。その一方で、2023年度には初めてブランドのアバクロンビー&フィッチが同社にとって最大の収益源となった。同社によれば、今後もアバクロンビー&フィッチのブランドが生み出す売上がホリスターを上回る見通しだという。Q2の決算発表会で、経営陣は2024年度の業績ガイダンスを引き上げた。売上高の成長率は当初想定していた10%から12~13%に引き上げられ、営業利益率の想定範囲も、当初の14%から14~15%の範囲になるとされている。
(forbes.com原文)