次世代に残す仕組みづくり
ふたつ目は山梨の芦川町に拠点をかまえるLOOOFだ。築100年前後の古民家をリノベーションした一棟貸しの宿泊施設「るうふ」などをプロデュースし運営している会社だ。本拠地のある山梨だけでなく、千葉など10店舗以上を展開しており、2024年7月には群馬の赤城にも新たな施設をオープンした。主に人口減少の課題を抱えている地域に、その地域の魅力を最大限生かした宿泊体験をつくり上げることで、むしろほかではできないオリジナルな体験に昇華させていき、地域社会への貢献を軸に展開している。面白いのはその資金繰りのやり方である。新たな古民家再生や運営のための初期費用については「暖簾分け」という言葉を用いて、その地域活性や価値観に賛同する人や企業から投資を募り、その建設から運営はLOOOFが担う。事業を通じて、地域経済に従来の資本主義とは少し異なる価値観を混ぜることで、あらたな仕組みづくりをしている。
趣や風合いをまとった歴史ある建物を次世代まで継承できるようにしていくこういった新しい手法は、時間を買うことができないことを考えれば、とても価値のあるアップデートだ。
長く続けてきたことや残してきたモノが、現代の私たちにとってもそのままで意味のある価値をもつかはわからない。時間や歴史に今にあった工夫と努力を加えることで、むしろ誰にもマネできない価値に変わる。年代もののワインや欧米の建築不動産のように、年月を重ねるほど価値が高くなるような切り口をいろいろと探索してみるのも面白いだろう。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。