テック業界は、少し前の世界的な半導体不足から回復したばかりだ。前回の半導体不足は、コロナ禍真っただ中の2020年に始まり、2023年末まで続いた。半導体が不足したことによる影響は、コンピュータープロセッサからグラフィックカード、ゲーム機、自動車に至るさまざまな製品に波及した。
ここに来て、半導体が再び不足するのではないかという懸念の声が上がっている。その理由は、半導体の製造に使用されるガリウムやゲルマニウムの供給が逼迫していることだ。
英紙フィナンシャル・タイムズの報道によると、中国政府が2023年8月にガリウムとゲルマニウムの輸出を規制したのを受け、欧州では両素材の原価がここ1年で2倍に上がっている。
中国政府が輸出規制をかけたのは、米国への報復だ。米国は、安全保障の懸念を理由に、中国に対する最先端半導体と半導体製造装置の輸出制限を主導している。
半導体不足による影響
中国は、問題になっている両鉱物の重要な供給拠点だ。フィナンシャル・タイムズによると、中国は、世界のガリウム生産量の98%を占めている。また、ゲルマニウム生産に占める割合は60%だ。同紙が、半導体原料を大規模に購入する組織の匿名情報筋による話として伝えたところによると、状況は「危機的」だ。
ガリウムとゲルマニウムの供給制約によって影響を受け得るのは、家電などの機器だけに限らない。この2つの鉱物は、暗視ゴーグルなど軍装備品を製造する際にも使用されている。
そこで問題となるのは、米国ならびに西側諸国(オランダを含む)が、半導体不足を回避するため、対中輸出規制を緩和するか否かだ。
前回の半導体不足では、複数の業界が、影響を受けて弱体化した。一部の自動車メーカーは、半導体を入手できるまで、生産停止や減産を余儀なくされた。ゼネラルモーターズ、フォード、トヨタも例にもれず影響を被り、新車の市場投入台数が大幅に減少し、中古車価格の急騰を招いた。
さらに2021年には、グラフィックカードの不足により部品価格が高騰した。それに拍車をかけたのは、暗号資産マイニング用グラフィックチップの需要だった。定価の4倍以上で販売されたグラフィックカードもある。オンライン上に出回るやいなや、いわゆる「転売屋ボット」が、すかさず大量に買いあさったためだ。
半導体の供給がさらに逼迫すれば、インテルなどの大手半導体メーカーが大打撃を受ける可能性がある。同社は現在も前回の半導体不足からの回復の途上にある。インテルは2024年8月はじめ、2024年4~6月期に16億ドル(約2335億円)の損失を出したことを明らかにし、1万5000人の人員削減を発表した。これを受け、同社株価は30%近く下落した。
(forbes.com 原文)