金利引き下げを強く示唆したパウエル議長
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、年次経済シンポジウム、通称「ジャクソンホール会議」で行った講演の中で、金利引き下げが間近に迫っていることを強く示唆した。8月23日に行われたこの講演で、パウエル議長は以下のように述べた。「政策を調整する時期がやって来た。向かう方向は明確であり、金利引き下げの時期およびペースは、今後入ってくるデータ、経済見通しの展開、リスクのバランスに依存する」
7月FOMC会合の議事録も利下げを示唆
これに加えて、7月のFOMC会合の議事録も、金利引き下げが近づいている可能性を示唆する内容となっていた。この議事録には、以下のような記述がある。「全参加者が、(実質的な政策金利にあたる)フェデラル・ファンド金利の誘導目標を5.25~5.5%で維持することを支持した。ただし複数の参加者が、最近のインフレ率の推移、および失業率が上昇していることから、この会合で誘導目標を25ベーシスポイント引き下げるべき条件が整ったとの見解を表明したり、そのような決断を支持する可能性があったと述べたりした」言うまでもなく、FOMCは実際には7月の時点で利下げに踏み切らなかったが、「複数の」政策立案者が、そのような動きが提案されていれば支持していた可能性があった。この事実は、その後に行われたパウエル議長のジャクソンホール会議での発言とあいまって、9月に利下げがある可能性が非常に高いことを示している。
FOMCの経済見通しに見る、利下げの兆候
FOMCが、現時点で最新の経済見通しを示したのは6月のことだった。ゆえに、この見解は今となっては少々古くなっていると言えるだろう。それ以降、インフレ率はさらに落ち着きを見せており、一方で失業率は多少上昇している。しかしながら、この6月の経済見通しにおいてさえ、大多数の政策立案者は、2024年のうちに1回ないし2回の利下げがあるとの見方を示していた。ただし、この時は少数派ながら、金利は年内は据え置かれると考える者もいた。
もう一つ、2024年内のFOMC会合は、9月18日、11月7日、12月18日に終了する3回しか残されていないという点にも、触れておくべきだろう。つまり、FRBが2024年内に利下げに踏み切るとしても、その決断を下せる会合はあと3回しかない。FOMCはまた、9月18日に終了する会合で、最新の経済見通しを示すことになっている。
金利はどこまで下がる?
債券市場は現時点で、2024年末までの金利の引き下げ幅はかなり大きくなると予測している。CMEグループによるFedWatchツールでは、年末時点でのフェデラル・ファンド金利は4.25~4.5%まで下がる可能性が高いと見ている。これが的中すれば、現在の金利水準より1ポイント低くなることになる。しかしながら、この予想に関してはかなりの不確定要素があり、引き下げ幅が上振れあるいは下振れする可能性はある。それでも、CMEの予測では、12月までにかなりの金利引き下げがあるという見方をとっている。