【お知らせ】Firefoxでの記事閲覧について

欧州

2024.09.02 16:00

ウクライナはポクロウシクを救えるか 主塹壕線わずか1本、頼みの綱の精鋭旅団は疲弊

Shutterstock.com

ロシア軍は8月29日、ウクライナ東部ドネツク州ノボフロジウカ北端の炭鉱施設にロシア国旗を掲げた。半年あまり前に陥落させたかつての要塞都市アウジーウカから、ウクライナ軍の重要な兵站拠点であるポクロウシクまでのおよそ40kmの軸で、これまでで最も遠くまで前進した。

進撃を続けるロシア軍と、2022年2月の全面侵攻前に6万人ほどが暮らしていたポクロウシクの間に現在、主要な塹壕線は1本しかない。しかも、この塹壕線を人員で満たせるほどの人的戦力をウクライナ軍がポクロウシク正面に投入しているのかも不明だ。

つまり、ポクロウシクはゆゆしい状態にあるということだ。ウクライナ軍も増援部隊を送っているものの、そのわずかな兵力増強ではこの正面を救えないかもしれない。

ポクロウシクが陥落すれば何が起こるのかはわからない。だが、ロシアによる全面戦争が2年7カ月目に入るなか、ウクライナ側の戦争努力に不利にはたらくのは間違いない。

今年2月半ば、ロシア軍の疲弊した2個野戦軍がついにアウジーウカを陥落させたとき、その先には新たな難関になりそうな光景が広がっていた。ポクロウシクまで、集落を縫うように張り巡らされた幾重もの塹壕線だ。

だが、それは見掛け倒しだった。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは「ポクロウシク正面のウクライナ軍部隊は組織だった防御をするのに十分な兵力とリソースが不足しているため、何度も撤退を強いられた」と解説している

ウクライナ側は塹壕線のすべての区画で敗れたわけではないものの、一部の区画では敗れた。そして、塹壕線のひとつの区画が失陥すると、その周辺の区画にいる部隊も退却を余儀なくされることが多かった。そうしなければ敵部隊に包囲されるおそれがあるからだ。

「最大の問題は、組織だった防御を行って陣地を守っていくのに、利用可能な人的戦力と経験豊富な部隊が依然として不足していることだ」とフロンテリジェンス・インサイトは指摘する。「防御がどれほどうまく構築されていても、あるいは防御の数がいくら多くても、必要な人員の10〜20%程度しか配置されていなければ、ロシア軍にすぐに圧倒されてしまうのは当然だ」
次ページ > 防御の要である精鋭の第47機械化旅団はM1戦車の半分を損失

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事