クルスク州内の接触線は今後数週間で、ウクライナ国内のほとんどの最前線と似たような状況になってくる可能性が高い。つまり、堅固な陣地が構築され、膠着し、双方とも陣地を出て行う攻撃は非常に危険なものになる。
周知のとおり、ウクライナ東部ドネツク州のポクロウシク正面は、膠着した前線の例外だ。この正面では、ウクライナ軍の防御部隊の統率が乱れるなかでロシア軍が引き続き前進している。ロシア側の前進ペースがあまりに速いため、ウクライナや支援国の政府で懸念が広がり、責任を問う声も出ている。
つい2週間ほど前まで、クルスク州の戦線は流動的だった。当時の混沌とした状況を反映しているのが、双方で鹵獲された装備のリストだ。ウクライナ軍部隊がクルスク州に電撃的に侵入し、不意を突かれたロシア側が可能な時と場所で反撃するなか、双方とも装甲車両などの遺棄が相次ぎ、一部は敵側に鹵獲された。
オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」が確認したところでは、ウクライナ軍はクルスクに侵攻した8月6日から27日までに、ロシア側の車両11両と榴弾砲1門、ドローン(無人機)1機を鹵獲した。一方、ロシア側はこの間にウクライナ軍の車両10両を鹵獲した。
これらの数字は鹵獲数の急増を意味する。7月の同じ3週間では、ウクライナ側によるロシア軍装備の鹵獲数は1000kmにおよぶ前線全体でわずか8、ロシア側によるウクライナ軍装備の鹵獲数は10だった。
双方が遺棄した装備の種類が状況を物語っている。迅速に行動しようとしたウクライナ側の歩兵大隊は、通常と違ってドローンや大砲の支援を受けずに、装甲車両でロシア側の防御線の奥深くまで入り込んだ。