映画

2024.09.23 11:30

齊藤 工×栗林和明 日本発巨大IPを狙え! グローバルヒットへの挑戦

栗林の『KILLTUBE』でも、映画のつくり方だけでなく「届け方」や「稼ぎ方」にも力を注いでいる。グッズのプロデュースや海外の劇場公開への挑戦、新しい印税の在り方を考える、など「108の実験」を実施し、劇場公開までにその過程と成果を公開していく。

「『MONDAYS』では宣伝を担当していたのですが、企画段階から制作チームと宣伝チームが融合していたことで、新しい試みにたくさん挑戦できました。そこで、『KILLTUBE』でもそれぞれのチームを分断しないでおこうと考えたんです。さまざまな実験をして、その成果を世の中に還元していくことで、より多くの人にポジティブな影響を与えられたらいいですね」(栗林)

世界のコンテンツ市場は183兆円に

IP(知的財産)とは、個人や企業が自らの力で新しくつくり出したアイデアや創造物がもつ価値のこと。アニメやゲーム、マンガといった世界に誇るコンテンツをもつ日本では、IPを軸にしたコンテンツ産業への期待が高まっている。日本経済団体連合会(経団連)によると、世界のコンテンツ市場は、2020年の約1.1兆ドル(約149兆円)から25年には約1.3兆ドル(約183兆円)への拡大を見込む。ジャンル別の25年までの成長率予測では、アニメと映画がそれぞれ年約30%の成長を遂げると推定されている。

米金融会社TitleMaxの調査によると、世界のコンテンツIPの累積収入額(ドル、19年までの累計)は、「ポケットモンスター」がトップ。2位には「ハローキティ」がランクインしたほか、「アンパンマン」「マリオ」など、上位25位のうち10以上のコンテンツが日本発となった。

こうした海外市場における日本発コンテンツの売上高は、21年には約4兆5,000億円と12年から3倍以上に成長している。経団連は22年にクリエイティブエコノミーの振興に取り組む「クリエイティブエコノミー委員会」を新設。日本コンテンツの海外市場規模を33年に15兆~20兆円とすることを目指す。日本が保有するIPを有効活用し、さらに優れたIPを生み出すことで、経済成長につなげる。


さいとう・たくみ◎2001年に俳優デビュー。映画製作にも携わり、18年『blank13』で長編監督デビュー(国内外で8冠)。23年には『スイート・マイホーム』が公開。また、『大きな家』(今冬公開)、ダニー・トレホら出演のハリウッド映画『When I was a human』(25年公開予定)ではプロデューサーを務めている。

くりばやし・かずあき◎映像企画を中心として、空間演出、商品開発、統合コミュニケーション設計を担う。2021年公開の映画『14歳の栞』を企画。JAAAクリエイターオブザイヤー最年少メダリストであり、カンヌライオンズ、スパイクスアジア、メディア芸術祭、ACCなど、国内外の広告賞を60以上受賞。

文=堤 美佳子、田中友梨 写真=山田大輔

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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