そのエヌビディアの最先端半導体を実際に製造しているのは台湾のTSMCだ。世界最大のこの半導体受託企業も時価総額トップ10圏内を定位置にしつつある。
両社の急激な成長の背景には、AIの急速な普及などによる半導体の需要拡大がある。誰もが当たり前にもつスマホやPCのなかでも、そこからネットワークでつながる先でも、大量の半導体が計算をしたり記録をしたり、何かを考えたり創造したりして、多様化し膨張するユーザーの欲望を満たしている。
こうした状況で、かつての電子立国で気を吐くのがレーザーテックだ。半導体をつくるうえで欠かせない検査装置の開発会社で、グループ全体の従業員数は1000人に満たない中堅規模だが、24年7月4日時点の時価総額は3兆2368億円。この10年で桁が2つ増えた。エヌビディアやTSMCほどは目立たないが、世界を独占している。
半導体は、土台の上に膜をつくり、その膜に光に反応する材料を塗布し、設計しておいたマスク越しに光を当て、光が当たった部分または当たらなかった部分だけを膜ごと剥がすという一連の工程を繰り返してつくられる。半導体の歴史は、この工程で使われる土台や膜、光に反応する材料、膜をつくったり剥がしたりする技術、そして当てる光や当て方など、それぞれの要素の進化の歴史だ。
例えば当てる光は、基本的には使う光源の波長を短くすることで進化してきた。波長は短ければ短いほどより微細な加工ができる。だから、同じタイプの光源のうち、扱いやすくて波長が長いものから、扱いにくいけれど波長の短いものへとシフトしてきた。しかし、そうした延長線上での短波長化が限界を迎え、それまでとは異なるタイプの、波長は桁違いに短く加工精度を上げられるものの、かなり扱いにくい光源への注目が高まった。
その光源が極端紫外線(EUV)であり、今、レーザーテックの成長をけん引するのは、EUVリソグラフィー(露光)でつくられる半導体の製造時に不可欠なEUVパターンマスク欠陥検査装置だ。