まず、「What」と「How」を分けて考える必要があると思います。つまり、スタートアップ投資家はまず、競合する可能性のある企業への投資を検討するかどうかを決める必要があります。これが「What」です。次に、競合する企業に投資した場合に、どのように対応するかを決める必要があります。これが「How」です。
「What」に関しては、「いや、スタートアップ投資家が競合他社に投資していいわけがない」とすぐに結論を出すのは簡単かもしれません。そのような明確な結論に至った方は、次の質問についてぜひご一考ください。
・最初は2つの異なるスタートアップに投資したはずが、その後、そのうちの1つがピボットしたり、新しいビジネスを始めてもう1つのスタートアップの市場に進出した場合はどうでしょうか? これは、起業家がまだ何を作るべきかを模索しているシードステージでは特によくあることです。
・2つのスタートアップが現在は競合していないものの、一方が今後3~5年の間にもう片方の市場に参入する予定だと主張している場合はどうでしょうか? その市場が現在の分野とはかけ離れていて、まったく現実味のない話だとしたらどうでしょう。あるいは、5年前にそう言ったものの、まだそれに近いことすら実行していない場合はどうでしょうか。
・7年前にあるスタートアップに投資し、今でもその会社の株主ではありますが、その会社が成長しておらず、もはや株主としてそれほど関与もしていない場合はどうでしょうか? それでも、投資後10年はその会社と同じ市場には投資ができないなどと自らにルールを課すのでしょうか。どれくらいの期間を置けば十分なのでしょうか。
最も「起業家に優しい」投資家なら競合他社には投資しないから、と結論づけるのは簡単です。しかし実際には、Y Combinatorやa16zのような最も「起業家に優しい」ブランドでさえ、競合他社に何度も投資したことがあります。特にY Combinatorは、同時期のプログラムに複数の競合他社が採択されることが知られています。
以下はY CombinatorのFAQページから引用し、翻訳した内容です。
・YCはすでに私のアイデアと似たようなことをする会社に出資しています。これは合否に影響しますか?
・影響しません。他の多くの投資家とは異なり、YCでは似たアイデアに取り組んでいる会社にすでに出資しているかどうかを選考の際に考慮しません。
仮に競合する企業を受け入れないようにしたとしても、スタートアップのアイデアは大きく変わることが多いため、いずれにせよ競合する企業が出てきてしまうでしょう。そのかわり、YCでは早い段階から対策を取っています。2つのYCスタートアップが関連するアイデアに取り組んでいる場合、私たちは片方に対し、もう片方が何をしているかについて話すことはしません。