現在69歳の鍾は、フォーブスの推定によれば今でも456億ドル(約6兆6000億円)の資産を保有している。しかし、27日に中国一の富豪に返り咲いたばかりの彼は、28日に農夫山泉の株価が最大13%急落したことを受けて、再びその座を失う寸前にある。
フォーブスのリアルタイム・ビリオネアリストによると、TikTok親会社のバイトダンスを創業した張一鳴(チャン・イーミン)の保有資産は434億ドルで、鍾との差はごくわずかなものとなっている。
農夫山泉は、二つの課題に直面している。その一つは、競争の激化と広報戦略上のミスにより、かつては売上高の約半分を占めていた飲料水事業が減速し、2024年上半期における売上高が前年同期比18.3%減の85億元(約1730億円)に縮小したことだ。さらに、同社の利益は前年同期比8%増の62億元(約1269億円)に達したものの、成長率は、ここ1〜2年で最低レベルに落ち込んだとアナリストは述べている。
「市場は、農夫山泉の飲料水事業の減速を懸念している。投資家はもはや、同社の将来の成長に確信を持てなくなっている」と、香港を拠点とする光大証券国際のケニー・エンは述べている。彼は、農夫山泉の今後の1〜2年間の利益成長率が1桁台にとどまるかもしれないと予測した。
杭州を拠点とする農夫山泉は、競合の娃哈哈(ワハハ)や国営企業の中国資源集団との長期にわたる価格戦争に直面しており、緑色のキャップが目印の、精製水製品の価格を1本あたり1元(約22円)未満に引き下げた。中国で人気の赤いキャップのミネラルウォーターも、多くの場合、かつての約2元(約41円)から約1.2元(約25円)に値引きされている。
農夫山泉は、主要な競合である娃哈哈を創業した宗慶後が2月に死去した後、競合企業に対し優位に立つために用いた戦略をネット上で厳しく批判され、ボイコットに直面した。また、中国の愛国的なネットユーザーは、農夫山泉がボトルのパッケージに日本の寺の写真が使用したことを「親日的」だと非難した。
農夫山泉は、27日に発表した中間期決算の中で、これらの批判の一部を「悪意のあるもの」としつつも、その影響を認めた。「今年2月末以降のネット上の批判と悪意のある誹謗中傷の急増により、当社のブランドイメージと売上高は大きな打撃を受けている」と、同社は英文のリリースで述べている。
(forbes.com 原文)