以前から、若い消費者層は飲酒を控える傾向にあると報道されてきたが、Z世代の間ではすでに、お酒を飲まないライフスタイルが定着したようだ。こうした状況を受けて、世界のワイン業界や蒸留酒業界では、将来的に飲酒習慣が変化することが懸念されている。
これまでは、Z世代は単に、RTD飲料(Ready To Drink、缶などを開けてすぐ飲めるタイプのアルコール飲料)やハードセルツァー(アルコール度数5%程度で天然果汁が入った健康志向飲料)といった、これまでとは違うアルコール飲料を飲むようになっただけだと考えられてきた。しかし、CGA by NIQのオンプレミス(店舗内)利用者調査(OPUS)の最新データによると、英国のZ世代消費者では、アルコール摂取量が全般的に大きく減少している。
法的に飲酒が認められる18歳から24歳では、「昨年より飲酒量が減った」と回答した人が30%、「アルコールを一切飲まなくなった」と回答した人が13%と、驚くような結果だった。
飲酒量を減らした主な理由は「健康」で、74%の人が「より健康的な暮らしを送りたいから」と回答した。ウェルネスを重視する傾向は、アルコールを控えることだけにとどまらず、包括的な健康を気にかける、より広範な文化的変化を表すものだ。若い消費者層は、心身のウェルビーイングをいっそう優先させており、それがおのずと、アルコールに限らず、さまざまな面での選択に影響を与えている。
「ノンアル」を掲げるソーシャルメディアやコミュニティの増加も、若者に広がるこうした傾向に拍車をかけている。インスタグラムやTikTokなどのプラットフォームは、ノンアル飲料や、「クリーン」な暮らし方と呼ばれるライフスタイルを売り込むインフルエンサーだらけだ。そしてアルコールは、(唯一最大の要素というわけではないにせよ)そうしたライフスタイルを阻む大きな要素の1つと考えられている。
ソーシャルメディアのプラットフォームは、消費者の好みを反映するだけではなく、そうした流れを突き動かすものにもなっている。
若者のアルコール離れは、アルコール業界にとってはもちろんうれしくない知らせかもしれないが、お先が真っ暗というわけでもない。この年齢層の約60%はいまも、毎週のようにバーやレストランに足を運んでいる。データでは、若い世代がバーでソフトドリンクを注文する確率が6%高いことが示されている。つまり、飲料セクターには、健康志向のいまどきの消費者に受け入れられる革新的なノンアル飲料を開発して提供できる大きなチャンスがあるのだ。それに、いずれ飲酒年齢に達するさらに下の世代は、より極端な選択をするとみて間違いないだろう。
CGA by NIQの顧客担当ディレクターを務めるヴィオレッタ・ヌジュニーナは、次のような見方を示した。「若い消費者を中心に、飲酒を控えることが主要なトレンドになりつつあり、質が高く健康を意識した魅力的なソフトドリンクを提供することが不可欠だ。こうした嗜好の変化に適応したメーカーこそ、飲料消費の新時代で成長していくだろう」
市場がこのように進化するなかで、アルコール飲料ブランドが目指すべきなのは、消費者の嗜好変化を把握してそれを生かし、成長とイノベーションを可能にする戦略的機会へと変えることだ。これは、よく騒がれているような「終わりの予兆」などではないのだ。
(forbes.com 原文)