研究によると、風力タービンは確かに鳥を殺している。EU圏内では年間14万羽から67万羽の鳥が風力発電所との衝突で死亡しているのである。しかし、鳥類にとってはるかに大きな脅威がある。それは、猫だ。イギリスでの5カ月間の調査期間中、家猫が2700万羽の鳥を家に持ち帰ったと推定され、実際の殺害数はこの数倍に上ると考えられる。
Robin Radar(ロビンレーダー)が開発した「マックスバード3D」と呼ばれる鳥類レーダーは、驚くほど小さな鳥の群れでも検知し、デンマーク水理環境研究所(DHI)のAI種識別技術と組み合わせることで、タービンの停止を作動させる。このシステムは近々、オランダの沖合風力発電所であるEcowende(エコウェンデ)でデビューする予定だ。
またさらに単純な解決策の試験が、スウェーデン電力大手のVattenfall(ヴァッテンフォール)によって成功している。これは、タービンのブレード1枚を黒く塗ることで、鳥が前方の危険を察知しやすくするというものだ。ノルウェーで行われた試験では、この黒いタービンブレードにより鳥の衝突が70%減少した。しかし、風力タービンを鳥にとってより目立つようにすれば、景観上の配慮が必要な場所では視覚的に目障りになる懸念もある。
ドナルド・トランプ前米大統領は、風力タービンが鳥を殺すと頻繁に主張しているが、他の要因がはるかに多くの鳥を殺していることには触れていない。トランプの風力タービンへの反感は、彼が所有するスコットランドのゴルフリゾート近くに、ヴァッテンフォールが風力発電所を建設する申請が2012年に認可されたことに始まる。その後トランプは、スコットランド政府を相手取った風力発電所建設に反対する裁判で敗訴した。