洋上風力発電で風車を海に浮かせる「TLP浮体式」、大林組が実証実験

プレスリリースより

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海に囲まれた日本では、地の利を生かした洋上風力発電の期待が高まっているが、なかでもTLP(テンション・レッグ・プラットフォーム)と呼ばれる浮体方式が日本近海の条件に適していると言われている。その1年にわたる実証実験が、7月から青森県の沖合で始まめられている。

洋上風力発電機の設置方法には、海底に柱を立てる着床式と海に浮かべる浮体式とがある。着床式は、水深50メートル以下の浅い海域が広がるイギリスなどでは主流だが、深い海域には適さない。そこで浅瀬の少ない日本では、海に浮かべた基礎の上にタワーを建ててブレードを回す浮体式の研究が行われている。

そのひとつ、TLP式は、海底のアンカーと浮体とを結ぶテンドン(係留索)を、浮体の浮力を使ってピンと張り浮体を安定させるというものだ。波による揺れが少なく発電効率を高めることができ、占有面積が小さいために漁業への影響も少ないうえに、構造がシンプルで設置も比較的簡単であるなど利点が多い。経済産業省も「低コストと優れた社会受容性を実現する」として期待を寄せている。

そのTLP式浮体の実証実験を、これまでさまざまな洋上風力発電の基礎の研究を行ってきた大林組が、青森県下北郡東通村岩屋の沖合3キロメートルの海域でスタートさせた。水深約34メートルの地点に実際の5分の1のサイズの浮体を設置した。そこで1年間をかけて挙動観測を行う。これは、実際の海でのTLP方式の実験としては日本初の試みだ。

大林組が開発した浮体は、低コストで大量生産を可能にするための新技術が導入されている。ひとつは、ポンツーン(浮き)に鋼材と鉄筋コンクリートを使ったハイブリッド構造。テンドンには、耐久性の高い低クリープ高強度合成繊維を使用。そして設置には、特殊な専用船を使わず、普通の船で曳航して行う独自の方式を確立している。ちなみに、この浮体は日本海事協会の船級検査を完了して船級を取得している。つまり、あれは船の扱いになるということだ。

経済産業省は、日本の洋上風力発電量の目標を、2030年度には10ギガワット、2040年には30〜45ギガワットとしている(1ギガワットはだいたい原発1基分)。TLP方式がうまくいけば、日本の洋上風力発電の可能性が大きく広がるだろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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