WOMEN

2024.08.30 13:30

ウクライナ人起業家がフェムテックで描く、女性の未来とアジアの課題

アンナ・クレシェンコ|Flora 代表取締役CEO

「産婦人科領域のビッグデータ活用は、欧米に比べて10年遅れている」

手厳しい指摘をするのは、フェムテック事業を手がけるアンナ・クレシェンコ。IT大国ウクライナの出身で、京都大学法学部留学中に起業した。

設立から4年、女性の健康状態を管理する個人向けアプリ「Moonly」はユーザー10万人を突破。法人向けの「flora biz」は、メーカーや金融機関など60社が導入している。

昨年、豊田通商と資本業務提携を結び、トヨタグループの工場で実証実験を行った。日本とベトナムの生産現場で働く女性従業員の生理や体調に関するデータを、作業効率データと併せて分析したところ、生理とPMS(月経前症候群)により効率が平均10%低下することがわかった。国別では、日本で最大3割、ベトナムは7割も下がっており、生産性への影響の大きさが浮き彫りになった。「集積したデータを横断的に活用し、業務の効率改善などに役立てていきたい」。

2030年には市場規模が14兆円を超えるとされるフェムテックだが、日本で参入するのはスタートアップか、大企業の社内事業であることが多い。

「二極化は残念なこと。大企業のネットワークや資金力と、スタートアップの駆動力をかけ合わせれば、大きなパワーが生まれるはずです」

だからこそ多様な企業と連携し、業界のプラットフォーマーになりたいと意気込む。今年はベトナムに続き、タイやインドへの進出も視野に。


アンナ・クレシェンコ◎1996年、ウクライナ生まれ。国立オデッサ大学国際関係学部を卒業し、2017年に京都大学留学。20年、Floraを創業。22年に京都女性起業家賞京都府知事賞最優秀賞、23年に京都府あけぼの賞を受賞。6歳から始めた空手は初段。

文=音部美穂 撮影=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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