同社はノルウェー海に位置するハイドン・モン鉱区の掘削を完了した。それにより、同鉱区の天然ガスの可採埋蔵量は、石油換算で最大1億4000万バレルに上ることが分かった。同鉱区はノルウェー本土から西に300キロ、水深1064メートルに位置する。同鉱区から約65キロの距離には既存のアースタ・ハンスティーン・ガス田があり、ポラーレド・パイプラインも通っている。また、OMVがすでに出資している産業ハブも整備されていることから、生産したガスを市場に出すことも想定される。
ハイドン・モン鉱区は、同社傘下のOMVノルゲが権益の40%を保有し、操業している。そのほか、イタリア炭化水素公社(ENI)傘下のノルウェー現地法人ボルエナジーと、日本の石油企業INPEXと出光興産が共同で設立したINPEX出光ノルゲがそれぞれ30%ずつ参加している。
OMVでエネルギーを担当するベリスラフ・ガショ上級部長は次のように説明する。「移行燃料としての天然ガスに重点を置くことで、OMVは手頃な価格のエネルギーに投資し、持続可能なエネルギーミックスを実現することができる。当社は2030年までに、自社の生産に占める天然ガスの割合を60%に拡大することを目指している。今回の商業的発見は、ノルウェーでの当社の生産割合の質を高めるとともに、多様化を推進することになる。ひいては欧州の信頼性の高いガス企業としての当社の地位を一層強固にするものだ。また、この地域が秘めている潜在能力を引き出し、アースタ・ハンスティーン・ガス・ハブの寿命を延長することにもつながるだろう」
OMVは今回の発表からわずか1年余り前、オーストリアにとって過去40年間で最大の、そして間違いなく今世紀最大規模となる天然ガスを発見したと発表していた。同社は昨年7月、ニーダーエスターライヒ州のビッタウ・ティーフ2a試掘井で良好な結果を得た。予備評価では、可採資源量は約48テラワット時、石油換算で2800万バレルとされた。これはオーストリア、少なくともOMVにとっては、かなりの重要性を持つことになるだろう。ビッタウ坑井が本格的に稼働すれば、オーストリアの天然ガス生産量は50%増加するとOMVは期待している。ロシアとの緊張が高まり、欧州のエネルギー安全保障に対する懸念が強まる中、この発見は中欧諸国で広く歓迎された。
OMVは、エネルギー、燃料・原料、化学品・素材という3つの事業を展開しつつ、従来のエネルギー事業から、循環型経済に焦点を当てた持続可能な燃料・化学品・素材企業への転換を図っている。欧州の同業他社と同様、OMVも低炭素事業への段階的な移行を望んでおり、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目標としている。同社の昨年の売上高は390億ユーロ(約6兆3200億円)だった。OMVは今年6月、長年の特徴だった青い文字のロゴから緑色の円を描いたロゴに変更。より環境に優しい企業の未来と炭素排出量実質ゼロの達成を目指す野心を「視覚的に裏付ける」ものだと説明した。
(forbes.com 原文)