当時の移動手段は馬車だったようだが、この流れから生まれた車がロールス・ロイス初のSUV「カリナン」と言えるかもしれない。
そのカリナンが、今年5月にシリーズIIへと進化した。
平均43歳。“若返った”シリーズⅡ
その特徴は、ひと言でいえば「若返り」。何しろカリナンが登場した2018年と比べて、ロールス・ロイスの顧客平均年齢は56歳から43歳へと下がったいうのだから。
エクステリアは、若い顧客層が暮らしていると思われる大都会の摩天楼に映えそうなデザインへと変更された。
薄くなったヘッドライトの端からデイタイムライトが垂直に下り、バンパー上端のラインは、同じく若い人々が余暇で楽しむ競技用ヨットをイメージさせるように、緩やかな曲線を描く。
もちろん中央にはパルテオングリルが引き続き鎮座するが、そこにもイルミネーションが備わり、夜間でもその存在感を強めている。
かつて、何台もの馬車でキャラバンを組み、未開の土地を行軍するさまは圧巻だったろうが、21世紀のアスファルトの上でも、光り輝く夜の都会でも、シリーズIIは威風堂々とクルーズできるだろう。
見た目も機能もモダンになった中身
インテリアも大きく変更されている。インストゥルメントパネルは、これまでの伝統的なウッドパネルの仕立てとは異なり、ガラスの調度品のようなディスプレイが上部を覆い、一気にモダンな印象に。
見た目だけでなく、中身の先進性も進化している。例えば専用アプリを使ってカーナビの目的地を設定できたり、愛車の施解錠もできる。
後席にもスクリーンが装備されていて、Bluetoothヘッドホンをペアリングすることも可能だ。だから後席に座れば飛行機のファーストクラス同様、好きな映画を楽しみながら目的地へと到着することができるし、ヘッドフォンではなく、18チャンネル1400Wアンプを使うオリジナルのサウンドシステムで大好きなロックに浸ることもできる。
一方で、自然の中を思いのままに駆けめぐるという、カリナンの存在意義をさりげなく主張するため、ロールス・ロイスらしい“職人”仕上げがインテリアに盛り込まれている。
例えばインストゥルメントパネルのディスプレイの下を覆う美しい木目は、厳選された樹種の天然木が用いられているが、この表情を出すために、同社は4年以上の歳月をかけている。
またシートに用いられている竹から作られた新しいレーヨン生地は、デザインチームのひとりが、コート・ダジュールの「地中海の庭園」にある広大な竹林から着想された。
それを織物職人とともに、最大220万のステッチと11マイル(約17.7km)もの糸を用い、20時間の工程を経て完成させている。
このように、同社にしかできない最高級の職人技も、カリナンの若返りに一役買っている。まるで“ただ最新機能を詰め込めばいいわけじゃない”とでも言うかのように。
若々しく、伝統的で、最先端。ドアを閉めた瞬間から、都会の喧噪から遮断され、乗員みんなが快適に過ごしているうちに、滞りなく目的地に到着できるSUV。それが現代の“馬車”カリナン・シリーズIIだ。
(この記事はOCEANSより転載しています)