宇宙

2024.09.03 17:45

気球から発射するロケット、日本のAstroXが実用化一番手へ

プレスリリースより

小型ロケットを気球で成層圏まで運び、そこから発射して軌道に載せるロケット打ち上げ技術の開発が世界で進められているが、日本の宇宙スタートアップAstroX(アストロエックス)は、そこで使われるハイブリッドロケットの発射実験に成功した。「クイック&コンパクト」な開発方針で着実に計画を進める同社は、ロックーン式ロケット実用化の一番手となる勢いだ。

8月25日、AstroXは、拠点とする福島県相馬市の実験場から、全高1.8メートルのハイブリッドロケットの発射を行い、実験を成功させた。ロケットは高度300メートルに達し、小型ロケット開発に必要な技術、洋上でのロケット回収のノウハウの確立が確認できた。
AstroX公式ホームページより。

AstroX公式ホームページより。


「Kogitsune」という名のこのロケットは、千葉工業大学の学生が開発し、それをベースに改良したもの。固形燃料と液体燃料を使う安全で高効率のハイブリッド方式で、これもまた世界各国が実用化を競っている技術だ。

じつは発射実験を前日に予定していたのだが、手順の誤りや酸化剤が漏れ出すなどのトラブルのために中止されていた。その翌日に発射を成功させた迅速性は、まさにAstroXの持ち味。同社の開発方針は「クイック&コンパクト」。課題、仮説、評価のプロセスを小さく素早く繰り返すというものだ。「100点のアウトプットを目指すのではなく、まずはクイックに30点でもアウトプット」することで、結果的にいちばん早く100点に辿り着けるという。また同社では、失敗の数が多いほど評価される。1回の失敗で1回成功するのではなく、100の失敗で10の成功を勝ち取るという考えだ。
千葉工業大学、大林組との共同研究による空中姿勢制御装置の実験の様子。

千葉工業大学、大林組との共同研究による空中姿勢制御装置の実験の様子。


AstroXは次に、全長5メートルのサブオービタルロケット「FOX2号機」を2025年度中に成功させ、2028年度中には全長15メートルの軌道投入ロケット「AstroX Orbital」によるサービス開始を予定している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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