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2024.08.28 13:30

形より本質。ミズノのものづくりは人

水野明人|ミズノ代表取締役社長

大阪万博会場の目と鼻の先、咲洲地区に立つミズノ大阪本社ビル。周囲に高層ビルが少ないため147mの高さに思わず目を奪われるが、実は同社のイノベーションを生み出す心臓部はビルの足元にある。2022年11月に稼働を始めた2階建てのイノベーションセンター「MIZUNO ENGINE」だ。

施設内には陸上トラックや体育館、テニスコートなど、競技場と同じ環境を再現。最新機器で人体の動きを測定するなど、研究開発に生かしている。

ミズノの4代目社長、水野明人は新施設をつくった理由をこう説明する。

「研究開発の機械は荷重が大きく、上の階に置けません。以前は大阪本社の地下で開発していましたが、それはあかんと思って開発専用の建物をつくりました。ただ、開発の人たちだけで考えると限界がある。MIZUNO ENGINE開設にあたっては、プロジェクトチームをつくってアイデアを出してもらい、開発以外の人も来て議論できる場所にしました。いわば、全社の知恵を集結させたイノベーションセンターです」

MIZUNO ENGINEの総工費は約50億円。器としては最高のものができた。ただ、ハードの力を引き出すにはソフトが必要である。

ミズノは新しいものを生み出す仕掛けを続々と導入している。例えば20年から始めたアイデアソン。所属部署に関係なく新商品・新規事業のアイデアを提案する仕組みだが、年々参加者が増え、23年度は668人もの社員が参加。過去のアイデアソンからは、スポーツの動きで子どもの成長を促すプログラム「MISPO!」や、スポーツテクノロジーを生かして開発した視覚障害者用の白杖「ミズノケーンST」といった新商品や新事業が生まれている。

そのほかにも、アイデアソンで採用されれば勤務時間の1割を好きな研究に充てられる「10%ルール」や、会社に籍を残したまま起業できる「出向起業」を利用するなどの仕組みを整備。社員が気軽に提案・挑戦できるカルチャーがあるからこそ、最新設備などのハードが生きるのだ。

「うちはもともと保守的な会社でした。しかし、型にはめると新しいものが生まれにくい。大切なのは、形式より本質。自由度を高めたほうが、一人ひとりが自分で考えて、いいものができるはずです」

ミズノは1906年創業の老舗総合スポーツ用品メーカーだ。創業家として背負うものは大きいはずだが、水野は「形式より本質」という考え方をいつ身につけたのか。

水野は中高時代、バスケ選手として活躍。大学生のときに4年間アメリカ・イリノイ州に留学した。向こうでもバスケをやろうと、試合や練習を観に行った。
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文=村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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