米労働省は2024年分の雇用統計の推定値を公表し、2023年3月から2024年3月までの就業者数を81万8000人下方修正した。なお、本データは予定されていた時間よりも30分遅れて発表された。
これに伴い、12カ月間のトータルの就業者増加数(農業を除く)は改定前の290万人から約210万人に、期間中の月平均増加数は同約24万2000人から約17万4000人にそれぞれ下方修正された。
株式市場はこの発表に好反応を示し、S&P500種株価指数は改定値発表直後に約0.3%上昇、日次の上昇幅を0.5%まで拡大し、7月16日以来の高値をつけた(21日終値は0.42%高)。
この改定は、米国全体の雇用情勢を示す指標として最も広く認知されている月次の非農業部門就業者数に対して定期的に行われる最初の基準改定となる。この大幅な修正が起こったのは、月次の雇用統計が雇用主への調査で行われるのに対し、今回のような改定では、より精度の高い四半期ごとの失業保険申請データを踏まえ政府が統計に調整を加えるためだ。
エコノミストは以前から今回の大幅な下方修正を予想しており、ゴールドマン・サックスのエコノミストは下方修正の幅について60万人から100万人の範囲と予想していた。雇用統計の大幅な修正は珍しいものではない。米政府は昨年8月、2023年3月までの12カ月間の就業者数を30万6000人下方修正し、2019年8月には、2022年3月までの就業者数を46万2000人上方修正した。
今回の下方修正は、晩春から初夏にかけて非農業部門雇用者数の拡大が鈍化したためだと見られている。米国では4月から7月にかけて月平均15万4000人の増加に留まり、失業率は4.3%と2021年10月以来の高水準に達した。8月2日発表された非農業部門の就業者数が低調だったため、一時は米国の景気後退が間近に迫っているとの懸念が高まったが、最近のデータでは景気に対する信頼感が回復している。
一部のエコノミストは、この下方修正の数字に一喜一憂する理由はほとんどないと主張する。ゴールドマンのエコノミストは、労働省の発表に先立ち、81万8000人の下方修正は「誤り」で「誤解を招く」可能性が高いと書き、今回の統計は40万人から60万人の誤差を含む可能性が高いと推定した。また、ヤーデニ・リサーチ創業者のエド・ヤーデニは、「私たちはこの結果を見て肝を冷やしてなどいない」と話し、今回の結果は数カ月前の雇用動向を示す「古いニュース」だと加えた。
(forbes.com原文)