ロシア国営タス通信によると、クセニャ・カレリナ被告は罪を認めているという。同裁判所は、被告がウクライナ軍の資金集めに関与したとしている。
カレリナ被告の代理人を務めるミハイル・ムシャイロフ弁護士は、今回の判決を不服として控訴するとしている。同弁護士は判決が下される前の時点ですでに英ロイター通信に対し、カレリナ被告は将来的に米露の囚人交換で米国に戻ることを望んでいると説明。判決が明らかになり次第、囚人交換の可能性を模索していくとの意向を示していた。
カレリナ被告はロシア出身で、2021年に米国籍を取得した。交際相手のクリス・ファンヘールデンが米NBCに語ったところによると、2人は今年2月、トルコのイスタンブールで4日間の休暇を過ごした後、カレリナ被告は90歳の祖母を訪ねる予定だったが、ロシアの空港に到着したところで拘束された。ファンヘルデンは、カレリナ被告が一時帰国を望んでいたため、自らロシア行きの航空券を購入して被告に贈ったと証言した。
被告が勤務していた米カリフォルニア州ビバリーヒルズの高級保養施設「シエル・スパ」によると、同被告は米ニューヨークを拠点とするウクライナを支援する慈善団体「ラゾム・フォー・ウクライナ」に51ドル80セントを寄付したことで、ロシアに対する国家反逆罪を犯したとして告発された。
タス通信によると、ロシアの国内情報機関である連邦保安庁(FSB)は当時、ロシアと米国の二重国籍を持つ米ロサンゼルス在住者を逮捕したと発表したが、氏名は公表していなかった。同庁は、この人物が2022年2月以降、「ウクライナの組織の利益のために積極的に資金を集めていた」と説明していた。
米国務省のマシュー・ミラー報道官は6月、米ABCニュースの取材に対し、同省が在ロシア米国大使館を通じてカレリナ被告との連絡を試みていることを明らかにした。だが、ロシアは米国との二重国籍を認めていないため、当局が面会を許可しない可能性が高いと説明していた。
米AP通信によると、カレリナ被告は2015年に渡米し、東部ボルチモアにあるメリーランド大学で学んだ後、西部ロサンゼルスに転居。ビバリーヒルズのシエル・スパで8年間勤務していたが、米国内に親族はおらず、毎年ロシアに帰省していた。今回の帰省は祖母と両親、妹を訪ねる目的で、2週間の滞在を予定していたという。
ロシアでは近年、米国人が拘束される事件が後を絶たない。ロシア極東ウラジオストクを私的に訪問していた米軍兵士のゴードン・ブラック2等軍曹は6月、ロシア人の交際相手に対する窃盗と脅迫の罪で有罪判決を受け、約4年の懲役刑が下された。米女子プロバスケットボール(WNBA)のブリトニー・グライナー選手は違法薬物所持の容疑でロシアの刑務所に10カ月間収監されていたが、米露の囚人交換で米国への帰国を果たした。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のエバン・ゲルシュコビッチ記者は昨年、米中央情報局(CIA)のためにロシアの軍事施設に関する情報を収集したとして、スパイ容疑で逮捕された。2018年には米元海兵隊員のポール・ウィランもスパイ容疑で逮捕されている。米政府はかねてよりゲルシュコビッチとウィランがロシアに不当に拘束されていると訴えていたが、両者は今月初め、計26人が解放された米露間の囚人交換で米国に帰国した。
(forbes.com 原文)