タイ・プーケットに2004年にオープンしたリゾート「トリサラ」は、アマンの伝説の初代GM、アンソニー・ラーク氏が生み出した極上のリゾートだ。ラーク氏は「この世界も流行があり、10年トップで走り続けているリゾートは非常に少ない」と、時代の流れに合わせて変わり続けることの大切さを語っていた。
「美食」で人を惹きつける
トリサラは創業から20年、そんな時代の潮流に乗り続け、今も高い注目と評価を得る。ランドスケープを生かした自然に優しいデザイン、500室が建設可能な敷地に39棟のホテルヴィラと22棟のレジデンスヴィラだけという贅沢、人目を全く気にしなくて済むヴィラ専用のインフィニティプールなどが特徴だ。しかし、トップランナーであり続ける秘訣の一つは間違いなく、リゾートにおける美食の重要性にいち早く気づき、力を入れてきたことだろう。2017年にはオランダ人シェフ、ジミー・オーフォストを擁し、レストラン「プル」をオープン。プルはミシュラン1つ星と認められたプーケット唯一の店となり、グリーンスターも受賞している。プルジャンパという名称の自家農園もあるウェルネスコミニュティ「トリバナンダ」内にオープンした姉妹レストラン「ジャンパ」もグリーンスターだ。
「ガストロノミーツーリズム」呼ばれる食を切り口にした旅、それによる集客が注目されるなか、昨年11月、さらにはっきりと美食を打ち出すようになった。プルをリゾート敷地内に移築したのだ。経営面でも、リゾート全体を統括するモンタナホスピタリティグループ内のレストラン部門に過ぎなかったが、トリサラと並列の別会社として独立させた。
それは、もはやリゾート内の一レストランではなく、独立して採算がとれ、単独で成り立つ価値のあるブランドとして認められた、ということでもある。
スタッフはおよそ倍の33人に増え、店のデザインはオーフォストシェフに一任された。これまでの小さな厨房から一転、面積の半分以上が厨房となり、よりクリエイションに集中できる環境となっている。1階には地元アーティストの作品を展示・販売するウェイティングスペースが設けられ、瀟酒なレストランとして生まれ変わった。