例えば、バンコクから車で2時間ほど離れたチャンタブリ産のドリアンが主役の料理。ドリアンは薪火の上でじっくり焼き、スモークしてからムース状にして半冷凍し、塩分のアクセントとしてホアヒン産のキャビアと合わせている。スモークと低温で独特の香りを抑え、旨味やテクスチャを十分に楽しめるようにしたのだ。苦手に思っている人にも先入観なく楽しんでほしいと、メニューには「ドリアン」ではなく「キング・オブ・フルーツ」とだけ表記している。
また、この辺りでとれるカシューナッツの果実をデザートに活用。独特の香りがキムチのよう、と考え、この果実でキムチを作り、アイスクリームに。ジャスミンティーのゼリーや「エッグフルーツ」と呼ばれる地元産の果実などを合わせて、どこにもないデザートを生み出した。このような発見に溢れた料理を求めて、世界中から食事客が訪れる。
「ウェルネス」も人を呼ぶ
姉妹店の「ジャンパ」も、ただの農園レストランではなく、大きな使命を持って生まれたレストランだ。海のそばに建つプルに対して、このジャンパは内陸に車で15分ほど走った森と池のエリアにある。この一帯はモンタナホスピタリティグループが数十年前から保有していたもので、トリサラ建設の際には、建設期間中、元々あった植物を一時的に保管しておく場所としていた。その後、一部をプルの農園としていたが、スイスのウェルネスブランドと協働し、この敷地全体を、サステナビリティとウェルネスをテーマにした一大拠点とするプロジェクトが動き出した。
その背景を、マーケティング・ディレクターのツリー・トラッコーナンシ氏は次のように説明する。
「NPO法人グローバル・ウェルネス研究所の最近のレポートによると、ウェルネス不動産はウェルネス分野で最も急速に成長している分野の1つで、2022年の3980億ドルから2027年には8875億ドルに倍増すると予測されています。タイは高いサービス基準を誇り、ウェルネスやヘルスリトリートの分野で長年世界的に評価されていることから、このプロジェクトに取り組もうと考えるようになりました」