ニューヨーク大学の医師であったカノクポン・タングスアンは、昨年10月に夫のジェフリー・ピッコロとディズニー・スプリングス内のレストランで食事をしたが、ピッコロの弁護士によれば、タングスアンとピッコロは食事がアレルギーフリーであることを何度も確認し、レストラン側もそれを保証していたにも関わらず、その後タングスアンは「体内の乳製品とナッツのレベルが上昇したことによるアナフィラキシー」により死亡した。
今年2月、ピッコロはそのレストランとディズニーに対し、医療費、葬儀費用、精神的苦痛の補償として5万ドル(約727万円)を求める訴訟を州裁判所に提出した。当レストランはディズニーとは独立して経営されているが、ディズニーが制作した地図には同レストランがアレルギー対応店であると明記されていたと訴訟では述べられている。
しかしディズニーは、将来ディズニーと紛争が生じた場合、仲裁によって解決することを約束する契約条件にピッコロは同意しており、彼が同社を訴えることは許されないと反論した。この契約条件は、妻の死の約4年前にDisney+のアカウントを作成した際、および彼らがテーマパークのチケットを購入した際に同意していたものだ。
同社は、このような仲裁条項を行使しようとしたことで直ちに非難を浴び、同社の主張は世間や法曹界の間で激しい議論を呼んだ。本件とは無関係の弁護士であるアーネスト・アドゥワは、この主張は 「契約法の限界に挑む」ものだとBBCのインタビューで語った。
同社は先週の声明で、「原告側の弁護士がレストランに対する訴訟に当社を含めようとしているのに対して、当社自身を弁護しているに過ぎない 」と述べ、自社の法的戦略を初めて擁護した。
しかし米国時間8月20日、ディズニーは新たな声明の中で、同社が仲裁の権利を放棄し、「本件は法廷で進行させる 」と述べた。
ディズニー・エクスペリエンス事業を率いるジョシュ・ダマロは声明の中で、「ディズニーでは、他のすべての考慮事項よりも人間性を優先するよう努めています」と述べた。「今回のような特殊な状況では、辛い喪失を経験したご家族のために、解決を早めるための繊細なアプローチが必要だと考えています」