それは、それらの作品がかなり意外な場所、イリノイ州ウィスコンシンのミシガン湖のほとりにあるゴルフリゾート、The American Club Resort(アメリカン・クラブ・リゾート)の敷地内にあるためだ。
キッチンやバスルームなどの水回り製品で知られる米Kohler Co.(コーラー)の不動産・ホスピタリティ事業部門、Destination Kohlerが展開する「Kohler Cabin Collection」は、5棟のキャビンからなる。そのうちの最新の1棟「Arsham Cabin」は、室内の家具やアメニティから庭まで、あらゆるものをアーシャムが手掛けている。
アーシャムはこのキャビンについて、「コーラーは完全な自由裁量権を与えてくれた……内部にあるものはすべて、私がデザインしたか、欲しいと思っているものだ。自宅にあるのとよく似た石庭も造った」と説明している。
背景にある被災経験
オハイオ州クリーブランドで生まれ、フロリダ州マイアミで育った43歳のアーシャムは、いくつもの肩書を持つほか、大のゴルフ好きとしても知られる。12歳だった1992年、フロリダ州東岸を襲ったハリケーン「アンドリュー」で自宅を破壊されたアーシャムは、使い物にならなくなった日用品が散乱する光景を目の当たりにした。ありふれたものをテーマに「future relics of the present(未来の遺物の今)」を描く彫刻作品、「Eroded(浸食されたもの)」シリーズを生み出したのは、そうした経験でもあるのだろう。
芸術専攻の名門校として名高い私大クーパー・ユニオンを卒業したアーシャムは、素晴らしいキャリアを築いてきた。マース・カニングハム舞踊団のステージデザインを手掛けたほか、パートナーの建築家、アレックス・ムストーネンと共同で建築プロジェクト・ユニットSnarkitecture(スナーキテクチャー)を創設。映像制作会社やファッションブランドも立ち上げている。
また、ティファニーやディオール、アディダス、ポルシェのほか、フレグランス・ブランドのバイレードや、スーツケースのリモワをはじめとする有名ブランドとのコラボレーションでも知られている。