「舌を食べるシラミ」として知られる寄生虫ウオノエは、体長わずか8~29 mmで、その外観はかなり不気味だ。分節した体には掴んだり切り裂いたりするための7対の脚があり、外骨格で覆われた姿はエイリアンのようでもある。
ウオノエは温暖な沿岸水域に多く生息し、カリフォルニア湾からエクアドル。グアヤキル湾にかけて見られる。その陰惨なやり口にも関わらず、この小さな生物は、動物界における寄生と順応の複雑性を垣間見せてくれる存在だ。
興味深いウオノエのライフサイクル
ウオノエは自由に泳ぐ幼生として生まれ、適切な宿主となる魚を探す。標的(フエダイ科の魚が一般的)を見つけると、エラを通じて侵入し魚の「舌」に付着する。ウオノエは鋭利な爪を使って舌の血液供給源を切断し、壊死させる。しかしながら、これはその魚にとって最期のときではない。ウオノエは残っている組織に自らを付着させ、宿主の血液と粘液を餌として実質的に魚の舌に取って代わる。
残酷に思えるかもしれないが、それは高度に特化された生き残り戦略だ。魚の舌に取って代わることで、ウオノエは安定した食糧供給がある環境を確実に手に入れることができる。多くの場合、その魚はこれまでどおり餌を食べ、生き続ける。付着した珍客とともに。
ウオノエが唯一無二の存在である理由
ウオノエが他の寄生生物と一線を画しているのは、その生命維持の方法だ。他の吸血性の寄生虫と異なり、ウオノエは宿主の器官を解剖学的に置き換える唯一の寄生生物であると、2019年にBMC Ecology and Evolution誌に掲載された論文は説明する。他の寄生虫の中にも、似たようなことをしているように見えるものはあるが、完全に器官を置き換えるところまではいくものはない。