意外なアセットをかけ合わせ、新しい価値を生み出すクロストレプレナーたち。約100件の共創プロジェクトを審査する過程で見えてきた「今、共創に求められている視点」とは。
共創のビジネスモデルをデザインする
今回の「Xtrepreneur AWARD 2024」で、医療分野からサーキュラーエコノミー、地域活性、ダイバーシティ&インクルージョンまで多様な共創プロジェクトが集まったなかで、新たに提示された論点をシェアしたい。ひとつは「共創の仕組みが新しく、デザインされているか」という視点だ。各社がアセットをもち寄り、協業の枠組みができているものの、実際に推進する事業の中身 や新規性がわかりづらいという事例もあった。審査員の住友商事執行役員CDO・CIOの巽達志は選考時に「社会実装されると、世の中が良くなる。nice to haveよりはmust to haveというように、よりニーズが高く、あったら世の中が変わると実感できるものがいいなと思います」と語った。そのためにも、共創を一枚絵に落とし込んだときに、いかにわかりやすいかが重要だ。また、共創の背景にある思いや課題に、手触り感があるか。ソーシャルグッドな世の中を実現させていくためには共感の輪を広げていくことが必要不可欠だ。
今回のグランプリとなった患者の成長に合わせて伸張する「心・血管修復パッチ」も医師にとって確実に「あったら良いもの」だ ったが、先端医療が進む現代まで実現していなかった。それでも夢を現実にできたのは、異なるバックグラウンドをもつチームをひとつに束ねていくストーリーがあった。共創にかかわる全員の思いを「なくてはならないもの」へと変えていったのだ。(記事はこちら)
「SDGsやCSRなどの取り組みではなく、共創によるビジネスモデルをきっちりとデザインすることが、クロストレプレナーに求められる役割だと考えます」。こう語るのは、トイトマ代表取締役社長の山中哲男だ。駅前開発から宇宙港まで、多様な共創の事業化支援を手がけてきた経験から、本特集のプロジェクトリーダーとしてかかわった。
山中は「災害支援や喫緊の社会課題にまつわる事業相談も多く受けますが、実際は事業として成立させるのが難しい。有事だけでなく日常使いをどうできるか、つまり事業として持続可能かという視点が必要です」と語る。