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2024.08.27 11:00

日本の果物でアジアを席巻 りんごから始まる「新・農業復活論」

「ひふみ投信」で知られ、この夏には、スタートアップなどの未上場株を組み込むことができるクロスオーバー投資信託を始動したレオス・キャピタルワークス。

同社のファンドマネージャー・松本凌佳と、日本の農産物を用いた、新たな産業構造の創出で注目される日本農業CEOの内藤祥平が、国内の農業の現状とポテンシャル、スタートアップの資金調達事情について語った。


松本凌佳(以下、松本):農業は1人あたりのGDPが他よりも低く、しかも基幹的農業従事者が年々減り続けていて、構造的な問題を抱えている産業なのではないかと思っています。そんな領域でどのようにしたら儲かるかが気になり、日本農業さんに注目するようになりました。

内藤祥平(以下、内藤):おっしゃるとおり、日本の農業の現状は衰退産業と言えます。生産金額が毎年落ちており、耕作放棄地も増え、儲からないので離農する人も増加しています。なぜ衰退しているかというと、需給の問題です。国内マーケットの縮小と共に、供給も減り、生産性も上げられないので儲からない、といった悪循環に陥っています。

なので、需要を増やすために、アジアのマーケットに注力しています。一昔前は日本の農産物は価格が高くて輸出できませんでしたが、今はアジアのマーケットが伸びているので、日本の農作物が受け入れられるポテンシャルが十分あるんです。

需要が増えて、供給を増やすことになったら、農地を集約すると同時に効率的な農法に投資することで、掛け算的に収量を増やし、利益率を向上させる。そうすれば、日本の農業がまた成長できるのではないかと。

私たちがまず注目したのは、りんごです。自分たちで大規模に生産しつつ、農家さんからも仕入れて、パッキングし、輸出するまでを一気通貫に行うのが、我々の事業の大きな柱です。円安も影響して、昨年の全社売り上げ53億円のうち、20億円強がりんごの輸出から生まれました。今年は35億円をりんごの輸出業で生み出し、全社売り上げは85億円を計画しています。

ないとう・しょうへい◎慶應義塾大学法学部在学中に米国・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校農業経営学部に留学。その後、鹿児島とブラジルで農業法人の修行を経験する。大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社にて農業関連企業の経営戦略の立案・実行などの業務に従事。2016年11月に株式会社日本農業を設立し、代表取締役CEOに就任。

ないとう・しょうへい◎慶應義塾大学法学部在学中に米国・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校農業経営学部に留学。その後、鹿児島とブラジルで農業法人の修行を経験する。大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社にて農業関連企業の経営戦略の立案・実行などの業務に従事。2016年11月に株式会社日本農業を設立し、代表取締役CEOに就任。

日本の農業を生業からビジネスへ

松本:業界が衰退するなか、日本農業さんが業績を伸ばしているのがわかりましたが、そもそも内藤さんは何をきっかけに農業に興味を持たれたのでしょうか?

内藤:実家が農家というわけではないのですが、日本の果物はおいしいのに、産業としてうまくいっていないというのが単純に不思議に思えて、農業という産業に関心を持ちました。

それとアメリカに留学した際、同じ学校に通う現地の農家の跡継ぎたちが、日常的に、会社の買収や新たな投資先の話をしているのが新鮮で。農業に資本主義的な考えを取り入れているのが面白いなと。

ただ、一番の転機は、社会人になってから海外へ行ったときですね。研修終わりに、日本人の農家というていで、現地のスーパーにりんごの売り込みをしてみました。日本の農作物には競争力があると思って、それを確認したくてやってしまったんですが(笑)、予想以上に反応が良くて。勝ち筋が見えて、すぐこの事業を始めようという思いになりました。そのまま、帰りの飛行機の中で退職願を書きました。

松本:すごいバイタリティですね! それは内藤さんが日本の農産物に競争力があると確信しているからこそでしょう。

では、国内の農業政策について、どのようにお考えですか? 2010年代から輸出を支援する動きがあり、今年5月の食料・農業・農村基本法の改正では、食料安全保障の確保が掲げられました。

内藤:農水省は当然のことながら日本の農業の行く先を真剣に考えているので、日本の農産業が成長産業となるべく、環境整備を進めていると思います。しかし、農地を有効活用しきれていないこの状況をどうするかは社会課題といっていい。

耕作放棄地を含め生産余力のある農地は、既存の生産者に加え、資本力があり、かつ農業に興味を持っている人や企業が耕すケースも増えるべきだと思いますが、これらの環境整備にはまだ課題があると考えます。

製造業などと違い、日本の農業は生業と捉えられ、ビジネス的な考えが普及していません。逆に言えば、農業をビジネスとして考えればチャンスがあります。そのため、我々はアジアのマーケットで需要を伸ばし、農地を集約し、新たな農法に投資しています。だからこそ、継続的な資金の投入が重要です。

まつもと・りょうが◎株式戦略部 ファンドマネージャー。2022年、東京大学経済学部経済学科卒業後、新卒でレオス・キャピタルワークス入社。2022年6月より、株式戦略部で企業調査に従事。

まつもと・りょうが◎株式戦略部 ファンドマネージャー。2022年、東京大学経済学部経済学科卒業後、新卒でレオス・キャピタルワークス入社。2022年6月より、株式戦略部で企業調査に従事。

クロスオーバー投資がスタートアップを上場後も継続的に支援する

松本:継続的な資金調達は、どのスタートアップにとっても大きな課題です。このたび当社が開発した新商品は、まさにそこをサポートしたい思いから生まれました。その名も「ひふみクロスオーバーpro」。スタートアップを含めた未上場株を組み込んだクロスオーバー投資を行うファンドです。公募投信なので、誰でも購入ができる投資商品となっています。

上場前は少数のVCや個人投資家などにエクイティストーリーを説明して納得してもらうことで資金調達ができますが、上場後は機関投資家や個人投資家がリアルタイムで株式を売買する中で株価や時価総額が決まってくることになります。

そのため、上場前にいくら注目されていた企業であっても、上場後は別のより多数の投資プレイヤーに自社のビジネスモデル・強み・成長戦略を伝えていく必要があり、その点で苦戦する企業は少なくありません。

上場株を中心に調査を行っている私たちが未上場企業にも横断して調査・投資を行い、その事実が発信されることには、上場株投資家への情報のアナウンスメント効果になるという意味で、価値があると考えています。また、上場後の課題を知る私たちだからこそ支援できることがあると考えています。

内藤:起業家からしたら、本当に心強い支援体制ですね。一部のシリアルアントレプレナーを除き、多くの起業家が初めての上場になるので、どんなことが待ち受けていて、どう対処すべきかアドバイスがもらえるのは、大変ありがたいです。

思い出すのは、エクイティファイナンスについて全く知識がないシード期に、エンジェル投資家にVCとの交渉などを教えてもらったことです。上場後は顔ぶれが変わり、見られる数字も違うので、プロフェッショナルな方々に支援いただくのは心強い話ですね。

松本:今回お話を聞いて、未上場企業のたぎるようなエネルギーをあらためて感じました。この先、日本農業さんは業界でひときわ存在感を持った企業になると思いましたし、さまざまな起業家の方とお話させていただくなかで、今後、日本でもスタートアップの創業が増えるだけでなく、画期的なビジネスモデルで社会変革を実現する企業が次々登場することが期待できると感じており、ワクワクします。

ひふみクロスオーバーproをローンチした今、そういった魅力的な未上場企業への投資機会を積極的に獲得し、先見性の高い、受益者の方々がワクワクするようなポートフォリオを作り上げていきたいと思っています。

内藤:私たちは現在、果物を日本で生産していますが、将来的には日本の品種の海外生産にも取り組みたいと考えています。南半球で生産することで販売時期を日本産とずらしたり、輸出コストを抑えてより多くの方に販売したいからです。このように段階的にビジネスの大きな局面を迎えるベンチャーにとって、継続的に資金サポートいただけるファンドが整うのはありがたいことです。

松本:そう言っていただけてありがたいです。一緒に日本を元気にする取り組みができるといいですね。




投資信託にかかるリスクについて

価格変動リスク:国内外の株式や公社債を実質的な主要投資対象とする場合、⼀般に株式の価格は個々の企業の活動や業績、市場・経済の状況等を反映して変動し、また、公社債の価格は発⾏体の信⽤⼒の変動、市場⾦利の変動等を受けて変動するため、その影響を受け損失を被るリスクがあります。

流動性リスク:有価証券等を売却あるいは取得しようとする際に、市場に⼗分な需要や供給がない場合や取引規制等により⼗分な流動性のもとでの取引が⾏なえない、あるいは不利な条件で取引を強いられたり、または取引が不可能となる場合があります。これにより、当該有価証券等を期待する価格で売却あるいは取得できない可能性があり、この場合、不測の損失を被るリスクがあります。

信用リスク:有価証券等の発行者や有価証券の貸付け等における取引先等の経営・財務状況が悪化した場合またはそれが予想される場合もしくはこれらに関する外部評価の悪化があった場合等に、当該有価証券等の価格が下落することやその価値がなくなること、または利払いや償還金の支払いが滞る等の債務が不履行となるおそれがあります。投資した企業等にこのような重大な危機が生じた場合には、大きな損失が生じるリスクがあります。

為替変動リスク:外貨建資産を組み入れた場合、当該通貨と円との為替変動の影響を受け、損失が生じることがあります。

カントリーリスク(エマージング市場に関わるリスク):当該国・地域の政治・経済情勢や株式を発行している企業の業績、市場の需給等、さまざまな要因を反映して、有価証券等の価格が大きく変動するリスクがあります。エマージング市場(新興国市場)への投資においては、政治・経済的不確実性、決済システム等市場インフラの未発達、情報開示制度や監督当局による法制度の未整備、為替レートの大きな変動、外国への送金規制等の状況によって有価証券等の価格変動が大きくなる場合があります。

未上場株式等への投資に関するリスク:当ファンドは、投資事業有限責任組合を通じて実質的に未上場株式等に投資を行なうため、他の金融商品を組み入れた投資信託と比較して、加えて、主に以下のリスクがあります。これらのリスクにより、基準価額が大きく下落し、損失を被るリスクがあります。

・当ファンドが実質的に投資する未上場株式等は、各銘柄の価格が各企業の個別要因や イベント(デフォルト、上場、M&A等)によって大きく変動し、上場企業の株式とは値動きの方向性や変動率が大きく異なる場合があるため、評価額が大きく変動し、その影響を受け損失を被るリスクがあります。

・当ファンドが実質的に投資する未上場株式等は流動性が著しく乏しいため、売却時に不利な価格での取引をせざるを得なくなるなど、流動性リスクおよび各種リスクの影響が大きくなる可能性があります。

・未上場株式等の評価額については、その時点で入手できる情報に基づいた公正価値の見積りであり、日々の投資信託の基準価額算出においては、影響を受ける可能性のある 重要な事象を完全かつ正確に反映することが困難となります。

したがって、お客様(受益者)の投資元本は保証されているものではなく、基準価額の下落により損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)の「投資リスク」をご覧ください。


「ひふみクロスオーバーpro」にかかる費用について

■お客様に直接的にご負担いただく費用:

購入時手数料:申込金額に対する手数料率は3.30%(税抜3.00%)を上限として、販売会社が定める料率とします。購入時の商品説明または商品情報の提供、投資情報の提供、取引執行等の対価として販売会社にお支払いいただきます。「自動けいぞく投資コース」において、収益分配金を再投資する場合は無手数料です。なお、お取り扱い可能なコースおよびコース名については販売会社によって異なる場合がありますので、販売会社にお問い合わせください。

換金時手数料・信託財産留保額:ありません。

■お客様に間接的にご負担いただく費用:

運用管理費用(信託報酬):信託財産の純資産総額に対して年率1.650%(税抜年率1.500%)を乗じて得た額。信託報酬とは、投資信託の運用・管理にかかる費用のことです。日々計算されて、投資信託の基準価額に反映されます。なお、毎計算期間の最初の6ヵ月終了日および毎計算期末または信託終了のとき「ひふみクロスオーバーpro」の信託財産から支払われます。

その他費用・手数料:組入有価証券の売買の際に発生する売買委託手数料(それにかかる消費税等)、先物取引・オプション取引等に要する費用、外貨建資産の保管等に要する費用、租税、信託事務の処理に要する諸費用、監査法人等に支払うファンドの監査に係る費用(監査費用)およびそれにかかる消費税等、受託会社の立て替えた立替金の利息など。 監査費用は日々計算されて、毎計算期末または信託終了のとき、その他の費用等はその都度ファンドから支払われます。これらの費用は、運用状況等により変動するものであり、予めその金額や上限額、計算方法等を具体的に記載することはできません。

レオス・キャピタルワークス株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1151号

一般社団法人投資信託協会会員・一般社団法人日本投資顧問業協会会員

promoted by レオス・キャピタルワークス / text by 杉山大祐(ノオト)/ photograph by 小野奈那子 / edited by 水上歩美(ノオト)