サーキュラーエコノミー部門には、レボインターナショナル、コスモ石油、日揮ホールディングスによる、廃食用油を原料とした国産SAFの大規模生産に向けた協業が選出された。
異なるカルチャーの組織が手を組み、1 社では成しえなかったインパクトを世の中に起こしていく──挑戦者たちの物語を紹介しよう。
大阪・関西万博が開かれる2025年に向けて、オールジャパンの体制で日本初の国産SAF(持続可能な航空燃料)の大規模生産に向けた共創が進む。舞台はコスモ石油堺製油所に建設中のSAFの製造工場、堺プラント。運営会社「サファイアスカイエナジー」(以下、サファイア)の両COOを務めるのは、西村勇毅(日揮HD)と山本哲(コスモ石油)のふたりだ。ツートップどちらもが「価値」という言葉を強調する。
「プロジェクトの目的は新たな価値観をつくること」と西村が明快に語れば、山本もこう応じる。「SAFのバリューチェーン構築がコスモ石油のミッション」。
「価値」とは何か。西村は「例えば衣類の値段にリサイクルのコストが含まれても、その価値に対価を払う社会かが重要。SAFも同じことが言える」と語る。
140以上の自治体・企業が参画
SAFの製造コストはジェット燃料よりも割高になる。それでも、世界的な脱炭素の流れのなかで航空各社はSAFの混合比率を高めざるをえない状況。堺プラントでの原料調達は、使用済みの天ぷら油などの廃食用油を100%使用するが、調達には、サファイアに資本参加するレボインターナショナル(越川哲也社長)が、市民運動から30年近くかけて培ったノウハウを生かす。西村はレボ社のポリシーに価値づくりのカギがある、と見る。「越川社長は『一斗缶1個あればどこにでも取りに行く』というスタンス。経済合理性を考えると『効率が悪すぎるから断ろう』となるが『そういうところから広げないとムーブメントにならない』という姿勢がブレないのがすごい」。「1社欠けても実現できないプロジェクト。共に資源循環の機運を高めていきたい」と、3社は攻めの姿勢で一致。
コスモ石油は東京都内の一部のガソリンスタンドで廃食用油の回収を始め、日揮HDは「Fry to Fly Project」を立ち上げ、現時点で140以上の自治体や企業が参画。新たな「価値」をつくり出すムーブメントを広げる。廃食用油の調達からバイオ燃料化までのパイオニアである越川は「廃食用油なら二酸化炭素を8割削減できるとされる。差別化して日本独自の文化をつくりたい」と未来を見据える。
越川哲也◎レボインターナショナル代表取締役CEO。1999年に同社を設立。技術顧問を経て2003年4月から現職。
山本哲◎コスモ石油次世代プロジェクト推進部プロジェクト推進グループ長。2022年4月から現職。
西村勇毅◎日揮ホールディングス資源循環・バイオ事業化グループサステナビリティ協創ユニットプログラムマネージャー。