新規事業

2024.08.23 16:51

徳島県上勝町発「飲んで、楽しむ」資源循環が都市へとスケール

スペック コンサルティング 事業部の北澤舞、三菱地所 TOKYO TORCH事業部 開発1ユニットの李想、上勝町企画環境課の菅翠(写真右から)

スペック コンサルティング 事業部の北澤舞、三菱地所 TOKYO TORCH事業部 開発1ユニットの李想、上勝町企画環境課の菅翠(写真右から)

日本から世界に誇れる共創プロジェクトに光を当てる、2回目の「Xtrepreneur AWARD 2024」。8月23日に発売した『Forbes JAPAN』2024年10月号で6つの受賞プロジェクトを発表した。

ローカルインパクト部門には、徳島県上勝町発、都市部での廃棄物再利用率 100%に向けた取り組み「reRise TOKYO」が選出された。三菱地所、スペック、徳島県上勝町が手を組み、実現させたものだ。

異なるカルチャーの組織が手を組み、1 社では成しえなかったインパクトを世の中に起こしていく──挑戦者たちの物語を紹介しよう。

2003年に日本の自治体として初のゼロ・ウェイスト宣言を掲げ、ごみのない社会を目指した取り組みを続けている徳島県上勝町。町ぐるみで43分別や年間4トンのごみのリユースに取り組み、再利用率80%以上を達成。小さな山あいの町のごみ削減に向けた挑戦が、世界から注目を集めている。上勝発の資源循環の仕組み「reRise」を構築したのが、町のクラフトビール「KAMIKATZ BEER」を醸造するバイオベンチャー、スペックだ。その取り組みをモデルに新たな資源循環を促すプロジェクトが、東京・丸の内エリアに広がりつつある。

2021年に竣工した、商業施設とオフィスエリアを備えた38階建ての高層ビル、常盤橋タワー。三菱地所がまちづくりを進めている丸の内にあり、エリア内で資源循環に着目した取り組みも展開し、2030年までに丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)で廃棄物再利用率100%の達成という大目標を掲げる。

「まちの未来を考えるビール」


そんななか、三菱地所とスペック、上勝町が手を組み2024年にスタートした「reRise TOKYO」。常盤橋タワー内に設置したコンポストの名称で、常盤橋タワーから出る生ごみを液肥化し、近郊農地でその液肥を活用した農作物を育て、収穫したものを常盤橋タワーや三菱地所の社員食堂で提供している。

さらにこの共創を象徴するアイテムとして、ビルから出た液肥を活用して栽培した米で、クラフトビール「TOWN CRAFT 〜まちの未来を考えるビール〜」を発表した。廃棄物の分類・回収から、生ごみの堆肥化、クラフトビールの製造まで、上勝町で行われている取り組みをモデルに応用したものだ。

常盤橋タワーに導入した、スペック社の資源循環システム「reRise」

常盤橋タワーに導入した、スペック社の資源循環システム「reRise」

プロジェクトのきっかけは、三菱地所が目標達成に向けたヒントを探すために行った上勝町への視察訪問。廃棄物の再利用を行ううえで、住民や利用者が面倒に感じやすい廃棄物の分類・回収に、どんな工夫をして積極的に参加してもらうか。三菱地所TOKYO TORCH事業部長の上田寛が上勝町を訪れた。

そのなかで、ごみの集積所と宿泊施設などが併設する上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」や、資源循環の仕組みを活用したクラフトビールも製造するブルワリー「RISE & WIN Brewing Co.」などスペックの取り組みも含め、地域住民が楽しみながらゼロ・ウェイスト活動に参加する様子を目の当たりに。「ごみの削減に向けた取り組みへの参加促進と、その効果が実感できる仕組みづくりに感銘を受け、丸の内エリアで実践できたらと考えました。多くの人が楽しめるビールを媒介として、さらに多くの人が参加する流れを作っていきたいと考えています」と上田は意気込む。

三菱地所TOKYO TORCH事業部長 上田寛

三菱地所TOKYO TORCH事業部長 上田寛

次ページ > 小さな町にとっての悲願

文=宮本拓海 写真=小田駿一(ポートレート以外は提供写真)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事