日本の理化学研究所脳神経科学研究センターのチームは、アルツハイマー病のマウスの脳内でドーパミンの生成を増やし、「ネプリライシン」と呼ばれる酵素のレベルを上げることを目的とした新しい治療法をテストした。
これまでの研究で、ネプリライシンは、アルツハイマー病の初期症状の1つである脳神経細胞内のプラークを形成するアミロイドβと呼ばれるタンパク質の生成を減少させることがわかっている。研究チームは、神経伝達物質であるドーパミンが、ネプリライシンのレベルを増加させることを発見していた。
8月6日にScience Signalingに発表された研究によると、科学者たちは、マウスの脳内でドーパミンを生成するニューロンを継続的に活性化させることに成功し、8週間後にはマウスの脳内プラークが大幅に減少したという。
その後、レボドパ(ドーパミンの代用として使われるパーキンソン病治療薬)が一部のマウスに投与された。レボドパには深刻な副作用があるが、マウスで行ったように遺伝子操作で成長を制御するよりも、人間においては薬でドーパミンを増やす方が実現可能な治療法であるためだ。
この薬を3カ月間投与したところ、ネプリライシンの増加とアミロイドβの減少が見られ、薬を投与されなかったプラセボ群よりも記憶テストの成績が良かったという。
研究者らは、アルツハイマー病患者のドーパミンを増やす研究を始める上で、レボドパの使用は良い出発点だと考えている。しかし、一部のパーキンソン病患者に深刻な副作用が見られたため、長期的には最良の選択肢ではないかもしれない。StatPearlsの調査によると、最も一般的な副作用は、めまいや吐き気、錯乱、幻覚、精神病、低血圧、興奮、妄想などだという。