ヘルスケア

2024.08.15 11:00

「快楽物質ドーパミン」がアルツハイマー病患者の記憶力を改善する可能性、研究結果

この薬を5年から10年間服用した患者のおよそ50%において、不可逆的な運動機能の低下などの合併症が生じる恐れがある。「次のステップは、ドーパミンが脳内でどのようにネプリライシンを制御しているかを調べることだ。それにより、前臨床期アルツハイマー病の人を対象とした新たな予防アプローチが得られるはずだ」とこの研究の筆頭著者の理化学研究所脳神経科学研究センターの綿村直人研究員は述べている。

「快感」を伝えるドーパミン

クリーブランド・クリニックによると、「快感神経伝達物質」としても知られるドーパミンは、ホルモンであると同時に、神経系が神経にメッセージを送るために使用する脳内神経伝達物質の一種でもあるという。ドーパミンは、人が楽しいことをしたときに脳から放出され、脳の報酬系で重要な役割を果たしている。

また同クリニックによると、ドーパミンが放出されると、人はその快感をさらに求めるようになり、薬物やアルコール中毒、過食などの行動につながる可能性があるという。さらにドーパミンレベルの低下は、アルツハイマー病やその他の認知症の初期症状を示す可能性があり、ドーパミンが認知症に大きく関与している可能性が研究で示されている。

アルツハイマー協会によると、2023年の時点で65歳以上の米国人の9人に1人に相当する670万人がアルツハイマー病に罹患しているという。2月にNeurologyで発表された研究によると、バイアグラのようなED(勃起不全)治療薬もアルツハイマー病の治療薬になる可能性があるといわれている。研究でED治療薬を処方された参加者は、処方されなかった参加者よりもアルツハイマー病になる可能性が18%低いことがわかったとのことだ。使用されたのは、PDE5I(ホスホジエステラーゼ5阻害剤)と呼ばれる薬剤だ。この薬剤によって脳への血流が増加し、脳内で神経細胞が消費するエネルギー量が減少することによって脳の健康が改善し、アルツハイマー病のリスクが減少する可能性があると研究者は考えている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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