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2024.08.20 16:00

プロジェクトマネジメントの最新トレンド──PMI CEOが語る“生成AI活用”の重要性とその未来

企業・団体が目標達成に向けて立ち上げるプロジェクトを、詳細な計画立案や管理によって円滑に遂行し、成功へ導いていく「プロジェクトマネジメント」。いま、このプロジェクトマネジメントと「生成AI」を結び付けた新たなムーブメントが生まれつつある。

そこで本稿では、プロジェクトマネジメントの標準化を目指して1969年に米国で設立された組織 Project Management Institute(以下、PMI)のPresident & CEOであるピエール・ル・マン(以下、ピエール)に、PMIの理念や具体的な取り組み、さらには現在注目している「生成AI」とプロジェクトマネジメントの関連性などについて話を聞いた。


より多くのプロジェクトを成功に導いていきたいという想い

さまざまな業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中、その進行に付随するプロジェクトの数が急増すると同時に、内容も複雑化の一途をたどっている。こうした状況において、プロジェクトをいかに効率良く管理・推進し、成功へ導いていけるのかの鍵となるのが「プロジェクトマネジメント」だ。

PMIは、このように世界各国で需要が高まっている「プロジェクトマネジメント」に関して、さらなる普及を目指している組織だ。標準的な知識体系である「PMBOK」の策定をはじめ、「PMP」「CAPM」「ACP」といった各種資格の認定、各種イベント・セミナーの開催などを行っている。2024年7月現在の会員数は73万人、認定資格保有者は160万人と、プロジェクトマネジメント関連の団体としては世界最大規模を誇っている。

このPMIで、2022年9月よりPresident & CEOを務めているピエールは、さまざまな国の企業経営に携わってきた人物だ。DXやM&Aなどを含む複雑な変革を成功に導いてきた立役者であり、その分野もコンサルティングや出版、マーケティングなど多岐にわたる。

「私がこうした複雑な変革やグローバリゼーションを通じて学んだのは、企業の運営および組織改革を行っていく上で、プロジェクトなしではなにも成し遂げられないことです。そして、プロジェクトの円滑な遂行に必要不可欠なプロジェクトマネジメントの礎を築くことにより、世界中の企業や行政団体が抱える問題解決に貢献していきたい、より多くのプロジェクトを成功に導いていきたい、というのがPMIの活動理念であり使命だと感じています」(ピエール)

認定資格や学びの場の提供でプロジェクトマネジメントを支援

PMIでは、大きく分けて3タイプのサービスを提供している。まず一つ目が、世界共通のプロフェッショナルな認定資格だ。企業や行政団体は、プロジェクトを最後まで円滑に遂行できる人材を常に探し求めている。PMIはその基準となる認定資格を通じて、体系的なスキルの獲得を客観的に証明。企業や行政団体は信頼できる人材かどうかの判断材料になるほか、一方の資格取得者も自身の能力を明確化し、キャリアアップにつなげられるというメリットがある。

二つ目は、eラーニングによる生涯を通じた学びの場の提供だ。これは、就職前の学生時代から在職中、退職後まで全キャリアを通じて活用できるもの。たとえば、働きながらプロジェクトマネジメントの知識やスキルを身につけるべく受講したり、PMPの資格維持に向けて効率良くPDU(Professional Development Unit)を取得したりと、さまざまな人々がeラーニングを活用している。

三つ目は、コミュニティベースのナレッジプラットフォームだ。このナレッジプラットフォームには、過去数十年間にわたり数えきれないほどのプロフェッショナルたちが作り上げてきた、珠玉のコンテンツが収められている。こうしたコンテンツを活用することで、より効率的かつ高品質なプロジェクトマネジメントが可能になる。

各段階を経て生成AIを使いこなす企業・団体が増加

PMIが、いまもっとも注目している分野が「生成AI」だ。ピエールは、「今後プロジェクトマネージャたちが円滑にプロジェクトを推進していく上でAI、特に生成AIの存在は極めて重要です。実際にPMIによる2023年のプロジェクトマネジメントに関するグローバルアンケートでも、プロジェクトマネージャの91%が『生成AIが今後自分たちの仕事を変えていくだろう』と回答しています。そこでPMIでは、プロフェッショナルたちの仕事がAIに奪われてしまうのではないかという不安を払拭すると同時に、AIによるトランスメーションを今後リードしていく彼らをサポートするべく、2023年7月に生成AIを用いた改革プロジェクトをリードしていこうと決断しました」と語る。

ピエールによると、現時点における生成AIのユースケースは「Automation(自動化)」「Assistant(補佐)」「Augmentation(増強)」という3つの段階的なカテゴリに分類できるそうだ。たとえば生成AIが登場してから現在までに、議事録の自動作成などで「Automation」を経験した方は多いだろう。また「Assistant」についても、アンケートの集計結果や各種資料のサマリー作成などに用いられるケースが増加。そして今後、各業務に適した人材探しや手法の最適化といった、「Augmentation」カテゴリに進む企業がより多くなると予想される。各段階を経て、生成AIを使いこなす企業・団体が増えているのだ。

eラーニングやツールなどで生成AI活用に向けた取り組みを強化

こうした背景から、PMIでは生成AIの普及に向けた取り組みを強化している。
2023年9月に生成AI活用に関する最初のコース「Generative AI Overview for Project Managers」を、2024年1月には生成AIを用いたプロジェクトでデータ管理を行うためのコース「Data Landscape of GenAI for Project Managers」をリリース。さらに2024年7月には、生成AIを活用する上で正しい質問方法や回答の最適化を図るためのコース「Prompt Engineering for Project Managers」がリリースされた。これらのコースは、生成AIを少しでも多くの人々に活用してもらいたいという目的から、PMI会員に対してすべて無償で提供。「Generative AI Overview for Project Managers」については会員以外でも利用でき、実際に約25万人が生成AI関連のコースを受講しているそうだ。

また2024年2月には、プロジェクトプロフェッショナルのための生成AIツール「PMI Infinity」をリリースした。こちらはコミュニティに蓄積された約1万4000件もの信頼できるドキュメント群と、OpenAIが提供する生成AI「ChatGPT 3.5」を統合。プロジェクトマネージャのアシスタントとして、会話形式で円滑なプロジェクトマネジメントに求められる各種情報や必要な知識、有用なヒントなどを提示してくれる。PMI会員であれば、誰でも追加費用なしで利用できるのも魅力だ。ピエールによると、2024年9月に新機能の追加を予定しているほか、今後も機能拡充を進めることで、プロジェクトマネージャの生成AI活用をサポートしていくという。

そのほかPMIではAI活用のソート・リーダーシップとして、生成AIをプロジェクト管理に適用する手法や実際のビジネスケースなど、さまざまなリサーチを実施。その結果を共有することで、プロジェクトマネジメントにおける生成AIの活用率向上を目指している。

日本の企業・団体がより成長できるようサポート

PMIでは今後、標準的な知識体系の策定や資格認定、各種イベント・セミナーの開催などを通じた継続的なプロジェクトマネジメントの普及活動に加え、生成AIを最優先とした取り組みの強化を図っていくという。
「世界各国のプロジェクトマネジメントにおいて先進的な改革を成し遂げていく上で、生成AIの存在は欠かせません。そこでPMIでも、プロフェッショナルたちが持つ知識やプラクティスを一体化し、効率的にグローバルで共有していける体制を整えていきます。そしてこのような改革を常に最前線で牽引していくことが目標です」(ピエール)

ピエールはインタビューの最後に、日本の読者に対して「日本はこれまで数多くの画期的なセオリーを創出するなど、プロジェクトマネジメントに対する関心や貢献度が極めて高い国です。実際にPMIの日本支部は2023年10月に会員数が6000名を突破したほか、非会員のボランティア参加人数も増加。アジャイル方式への移行といった背景も影響し、年間で10%以上という世界的にも珍しい成長率を記録しました。こうした日本の皆さんの積極的な取り組みや努力に応えるべく、PMIでは今後も海外の事例などを共有しながら、日本の企業・団体がより成長できるようサポートしていきます」とメッセージを送ってくれた。

Project Management Institute 

Promoted by Project Management Institute(PMI) / text by Koichi Araki / photographs by Kizuku Yoshida

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グローバル時代のプロジェクトマネジメント