カンヌライオンズ2024の話題作である「クアーズライト・アウト」は、このアクシデントを見事に活かした事例だ。米国のビール「クアーズライト」が実施したこの事例は、ブランドエクスペリアンス&アクティベーション部門ゴールド等を受賞した。
Coors Light - Coors Lights Out (case study)より
リアルな缶を製造・販売
大谷翔平選手の大きなファールボールが直撃したのは、外野の一角に設けられていたクアーズライトのデジタルサイネージだった。その一撃は、クアーズライトの缶の左上、「Coors」の「C」の真上辺りに真四角の黒い穴をあけた。Coors Light - Coors Lights Out (case study)より
これに対し、マーケティングや広告コミュニケーションに関わる人々であれば「困ったことだ」と感じ、その四角い穴を“欠損”だと考えるだろう。しかし、この時のクアーズライトの担当者たちは、まったく異なる行動に出る。一見してネガティブな状況を逆手に取ったのだ。
まず、ファールボール直撃から48時間以内にCoorsのCの上のところに四角い穴があいたように見えるリアルな缶を製造し、販売した。そして、通常のサイネージや屋外広告に出される缶も、この四角い穴あき缶にした。エンジェルス・スタジアムのすべての広告にこの穴あき缶を登場させ、クアーズ側が広告に穴を開けているかのようにふるまった。アクシデントで空いてしまった四角い穴を、野球ファンのメモリアル事象として、位置づけようと試みたのだ。
Coors Light - Coors Lights Out (case study)より