それ以外にも、漁業に与える影響に関しては、比較に値する対象がある。騒音やインフラ開発に関しては、石油およびガス開発セクターとの比較が成り立つはずだ(このセクターは、かなり長期間にわたって影響が測定されてきた実績がある)。石油およびガス開発のインフラでは、深海底での採掘と比べて、壊滅的な影響をおよぼす不具合が起きる危険性がはるかに高い上に、油田やガス田自体から大規模な漏出が発生する恐れもある。
ゆえにISAの役割は、気候変動の影響緩和に関する、より幅広い議論、ならびに陸上および海上での生物多様性保護につながる、比較に基づく対策とも分かち難く結びついている。
ISAはまた、鉱物採取に関する世界的なガバナンスの仕組みの構築を、少なくとも試みた実績はあり、この点についてはさらなる評価に値するはずだ。
ISAの権威を貶めようとする者たちに、頭に置いておいてほしいことがある。それは、ISAのような組織が存在しない場合、あるいは、存在しても能力が不足している場合には、国際的な執行機関の力のおよばない深海底に、いわゆる「共有地の悲劇」が生じる可能性があるという点だ(共有地の悲劇とは、多くの人の利己的な行動によって、共有資源が枯渇する問題だ)。
ISAは、たった1つの業界エコシステムに照準を定めた、小さな枠に収まることなく、現在進行中のグリーンシフトに関して、より広範な議論の一角を占めるのに絶好の位置にある。国連環境計画(UNEP)での勤務経験をはじめとする経歴を持つカルバーリョが、現在直面している課題に、地球全体を考慮する視点からアプローチすることを筆者は期待している。
(forbes.com 原文)