政治

2024.08.08 18:00

かつて「銃の擁護者」だった米副大統領候補ウォルツ知事、銃乱射事件を機に転身

Tim Walz(Photo by Scott Olson/Getty Images)

11月の米大統領選で民主党の指名候補となるカマラ・ハリス副大統領は8月6日、副大統領候補にミネソタ州のティム・ウォルツ知事を指名した。彼はかつて、人々が銃を所持する権利を擁護し、全米ライフル協会(NRA)からも高く評価されていた。

しかし、彼はその後、銃規制の推進派に立場を変え、ミネソタ州で銃規制法を成立させた後に民主党の副大統領候補となった。

2018年の州知事選で当選するまでの12年間、連邦議会の下院議員を務めたウォルツは、人々が銃を所持するための権利を擁護し、NRAからもA評価を受けていた。2010年の声明で彼は「NRAと共に憲法修正第2条(国民の武器保有権を保障する条項)を守ることを誇りに思う」と述べていた。

下院議員時代のウォルツは、退役軍人が銃を所有しやすくする法律や、首都ワシントンの銃規制を緩和する法律に賛成票を投じ、狩猟や娯楽目的の射撃へのアクセスを拡大する法案を提案した。

しかし、2018年2月に生徒ら17人が死亡したフロリダ州パークランドの高校の銃乱射事件を受けて、その年に知事選に立候補したウォルツは、その立場を変えた。ミネアポリスの地元紙のオピニオン記事で彼は、銃規制の強化を訴え、NRAが「銃暴力を防ぐための最も基本的な措置を妨げる最大の障害」と呼び、自身が以前から、銃の購入時の身元照会の厳格化などの「常識的な改革」を長年支持してきたことを強調した。

ウォルツはまた、NRAから受け取った1万8000ドル(約260万円)の政治献金を、任務中に死亡または負傷した兵士の家族を支援する慈善団体に寄付したと述べ、対人殺傷用の銃器類の禁止にも支持を表明した。

その後、ミネソタ州知事に就任した彼は、銃規制改革を推進し、2023年には銃の購入者の身元調査の強化や、自身や他人に危害を加える恐れのある人物から銃器を取り上げられる「レッドフラッグ法」などの一連の法律に署名した。

「私はこの部屋の誰よりも銃についてよく知っている。学校や教会、銀行などの人々が恐怖を抱かずに過ごそうとしている場所に戦争のための武器が必要ないことを知っている」とウォルツは、2023年の演説で述べていた。「私は、議員としての最初の任期にNRAからA評価を受けていた。今は最低の評価だが、問題なく夜眠れている」と彼は述べていた。

現在も狩猟が趣味

狩猟を趣味とするウォルツは先日、庭のあちこちに七面鳥がたむろする写真をX(旧ツイッター)に投稿し、「ここ数年、狩猟中に七面鳥を見たことはなかったが、今日は彼らが私を嘲笑している」と書いていた。

ネブラスカ州出身のウォルツは、陸軍の州兵を務め、政治家になる前は長年社会科の教師を務めていた。彼は、学校でアメリカンフットボールのコーチをし、性的マイノリティを支援する団体のゲイ・ストレート・アライアンス(GSA)を監督していた。

ウォルツは、以前は穏健派と見なされていたが、共和党は彼がハリス副大統領の左よりのスタンスをさらに強化すると非難しており、トランプ陣営は火曜日の声明で、「カマラ・ハリスはワルツを選ぶことで急進左派に屈服するのみならず、危険なまでにリベラルな方向性をさらに強化した」と主張した。ウォルツの民主党の副大統領候補への起用は、近年の相次ぐ銃乱射事件を受けて提案された、一連の銃規制改革案に共和党が反対し続ける中で行われた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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