マーケティング

2024.08.15 13:30

愛される商品、愛される会社とは 「推しのつくり手」を見つけてみよう

今や「推し」の概念は、アイドルやアニメの世界だけのものではない。製品や企業を愛して支える幸せな消費が増えている。マクアケ創業者による好評連載第44回。


自分が好きなアイドルやアニメキャラクターなどをさまざまなかたちで応援する「推し活」が広がっている。ライブ公演への参戦やグッズの購入などを通して「推し」を支えるファンの慣習は、その言葉と共に世の中の当たり前の風景になった。
 
私も先日、Forbes JAPANの名物企画「30 UNDER 30」のアドバイザリーボードにも名を連ねるSKY-HI氏がプロデュースした日本人7人組のダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST(ビーファースト)」のドームライブを鑑賞しに行ったのだが、彼らがデビューするまでのオーディションに密着したテレビ番組が放映されていたこともあり、会場には幅広い年齢層のファンが詰めかけていた。

メンバーたちがデビュー前から積み重ねてきた努力や葛藤、世界を目指す覚悟といったストーリーが、番組やSNSでの発信を通じてファンに共有されることにより、彼らの間には「特別な距離感」が生まれている。それを感じながら会場で音楽やパフォーマンスに没入している姿は、人間が生きていくうえで、ある種の豊かさを感じさせるものだった。チケットやグッズの購入も、「推し」の観点から見れば、ただの消費とは違う感覚を得ることができる。

推しながら買う

こうした「推し」の感覚はエンタメ業界から生まれた概念だが、ここ数年でいろいろな分野に拡大していると感じる。新しいモノやサービスの応援購入ができるMakuakeを見ていても、推しの概念はプロダクトのつくり手に対してまで広がっているようだ。
 
例えば、スマホの充電ガジェットを中心にヒット商品を次々創出するCIO(シーアイオー)という会社。プロダクトの特徴や改良点などをYouTubeで発信しているのだが、そこで顧客の声をキャッチアップしてハイスピードで新商品に反映することで、どんどんファンを増やしている。商品の購入者は、新機能が搭載されるまでの背景を知ることによって、よりプロダクトに愛着をもち、そのアイテムは生活に欠かせないものとなる。

私もそうしたファンのひとりなのだが、まるで好きなミュージシャンや映画監督の新作を待ちわびるように、彼らが掲げる「多機能と最新テクノロジーでわくわくする未来をつくる」という理念に沿って、次にどんな新商品をつくってくれるのかと、楽しみにしている。
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文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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