前号でメスカルを紹介するにあたり、バーカルチャーの先端にいるバーテンダーたちが未知の酒に脚光をあて、トレンドを誕生させてきたと書いた。しかし、今回は流行をつくるだけでは飽き足らず、自ら新しい酒を生み出し、さらには社会課題も解決してしまうという先駆的なバーテンダーに着目したい。
その人の名は後閑信吾。弱冠22歳でNYへわたり、世界的なカクテルコンペティション「バカルディ レガシー」で優勝。上海でのバー経営の傍ら2018年に帰国し、バー「The SG Club」(東京・渋谷)をオープンさせた。そこからの破竹の勢いは多くの人の知るところだが、彼がほかの成功者と異なるのは、店舗を増やしてビジネスを拡大していくだけではなく、酒類業界の発展のために自ら市場を拡大していこうとする視野の広さだ。
たとえば、日本の焼酎を代表する3つの酒蔵とコラボレーションして開発した「The SG Shochu」は、ほぼ国内でしか消費されていない焼酎にグローバルなカクテルベースとしての新しい価値と可能性を与えたし、23年には泡盛の蔵元と共に黒糖リキュール「KOKUTO DE LEQUIO」を開発。沖縄県の基幹産業である黒糖が在庫余剰になっているという社会課題に対し、解決の一端を担っている。
「コクトー デ レキオ ヤンバル スパイスドラム」は沖縄をテーマにした酒の第2弾。黒糖由来のラムをベースに、沖縄原産のボタニカルを3種採用しているが、キーボタニカルとなったシークワーサーには、廃棄処分されていた搾汁後の果皮や種を使用。より一層、沖縄県の農業課題に正面から取り組む一本となった。
さて気になるその香りと味わいは……まず感じられるのはシークワーサーのさわやかなノート。次いで月桃やピパーチ(沖縄原産の島こしょう)からくるほの甘く、スパイシーでオリエンタルなアフターテイスト。後閑が自らシェーカーを振ってくれたカクテル「ダイキリ」をすすれば、やんばる(沖縄本島北部)の森林がもわんと眼前に立ち上ってくるような、幻惑的な味わいであった。
一杯のカクテルが飲む人を幸せにし、つくる人を豊かにし、さらには農業従事者や地方の抱える社会課題をも解決してくれたら、まさに近江商人言うところの「三方良し」というわけだ。こんな気分の良い夜は、誰に気兼ねすることもなく「もう1杯」とお代わりを頼みたい。
コクトー デ レキオ ヤンバル スパイスド ラム
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容量|500ml
度数|43度
原料|黒糖ラム、シークワーサー、月桃、ピパーチ
価格|4950円(税込)
問い合わせ|SGマネジメント
今宵の一杯はここで
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![「沖縄の農業課題を解決するお酒を今後も開発していきたい」と後閑氏。](https://images.forbesjapan.com/media/article/72985/images/editor/caa336563e5c447570915c9a2fd6aa04b56ccbd3.jpg?h=900)
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