スリランカと違って、欧州は肥料の使用を禁止するのではなく、ロシアからの輸入を阻止するだけだろう。欧州の肥料生産は増加し、米国やその他の供給源(カナダ、中南米、アフリカ)からも、ロシア産の穴を賄うだけの供給があるだろう。ロシア産の肥料に見切りをつけるのは、ロシア産のエネルギーへの依存をなくすことよりも難しいことではないと見る向きもある。
スイスのエネルギー会社METグループの最高経営責任者(CEO)のベンジャミン・ラカトスは次のように語っている。
「欧州の肥料産業にとって、危機的な時代がやってくる。肥料会社の運営費用の70~80%は天然ガスによるものだ。欧州の肥料業界は、他の業界に比べて天然ガスやエネルギーのコストの上昇が比較的早いという課題に直面することが予想される業界の1つだ。欧州の政策立案者らは、肥料市場の構造を外部に依存している天然ガス市場のようにしたいのか、それとも代替の輸入を阻止する何らかの規制を導入したいのか、あるいは欧州の肥料産業を存続させる欧州産の一部使用を課したいのか、考える必要があるだろう」
要するに、西側諸国は石油と天然ガスに依存する製品の幅広さを理解しなければならない。社会全体としてこの理解が欠如しているため、ロシアは西側の制裁を逃れる数多くの手段を持っている。西側はそ制裁逃れを防ぐために警戒しなければならない。さらに、化石燃料からの脱却を進めるにあたって、スリランカのような悲惨な事態を繰り返さないよう、西側諸国は慎重に行動する必要がある。さもなくば無責任であるだけでなく、望ましい移行とならない。
(forbes.com 原文)