宇宙

2024.08.07 18:00

8月5日に始まった「水星逆行」の仕組みと意味、天文学者が解説

2024年8月5日~27日、水星は逆行運動する(Getty Images)

8月5日から水星が逆行している。もし占星術師を信じるなら、この8月5日から27日までは、人間同士だけでなく、デバイス間のコミュニケーションにもフラストレーションが溜まるという。テクノロジーにおける事故や誤解、誤動作が起こるなどといわれているが、この現象はそれよりずっと興味深いものだ。

2024年の水星逆行はいつか?

2024年に起きる水星逆行の期間は以下のとおりだ(いずれも日本時間)。

・2024年4月2日~4月25日
・2024年8月5日~8月29日
・2024年11月26日~12月16日

水星逆行は決して珍しい現象ではない。なぜなら水星は88日間で太陽の周りを回っているからだ。内惑星、つまり地球よりも太陽に近い惑星である水星は、地球における1年間で4回近く太陽を周回している。その間に3回、地球に近づくタイミングがある。ここが重要だ。

水星逆行とは何か?

水星逆行とは何かを理解している人は少ない。それは「水星が逆方向に動く」ということだが、もちろん水星は何も特別なことはしていない。ただ太陽を周回しているだけだ。

水星逆行とは、同惑星が数週間にわたって西から東ではなく、東から西へ逆方向に動く「ように見える」現象だ。

逆行が起きる理由

私たちは、動くプラットフォームから夜空を見ている。地球はどの惑星とも違った速度で、太陽の周りを回っている。水星と地球が最も接近した際、水星は地球からだと後退しているように見える。これは異なるスピードで動く惑星の間で生じる視覚効果だ。

水星逆行は人にどんな影響を与えるのか

影響を与えることはない。ありえない。目の錯覚とはそういうものだ。ではなぜ、騒いでいる人たちがいるのか? 占星術師は地球から見た天体の動き方が、地球上の人々や出来事に何かしらの影響を与えると信じている。

水星の逆行が占星術におけるコミュニケーションやテクノロジー、旅行の問題に影響があるとされるのは、水星(mercury)の語源であるローマ神話に登場するメルクリウスに関係する。商人や旅人の守り神とされるメルクリウスはギリシア神話のヘルメスと同化した存在で、「神々の伝令師」であり、コミュニケーションの象徴だったためだ。

惑星の位置と動きを研究する天文学者は、これを逆行運動と呼び、惑星の動き方による必然的な結果だと説明している。しかし惑星が時として逆方向に動くように見える現象は、現代人に驚くべき影響を与えているのだ。

水星逆行が重要な理由

惑星が逆方向に動くように見えることは、科学を飛躍的に進歩させた観察結果だった。星空を見る人たちの間で「the wanders(放浪者たち)」と長年呼ばれてきた惑星について天文学者は、惑星が夜空を逆行するように見えるのは、惑星が地球ではなく、太陽を周回していることを意味していると考えてきた。水星の見かけ上の逆行は、1543年にニコラウス・コペルニクスが提唱した、地動説の正しさを証明した。

つまり、水星逆行があなたに影響を及ぼすことはない、安心して旅行にでかけ、コミュニケーションを取り、誤動作や故障の心配をすることなく電子機器を購入しても構わない。水星は逆方向に動いているわけではなく、私たちにそう見えているだけなのだから。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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