英国のイングランドや北アイルランドでは極右主義者らによる抗議活動が暴動に発展し、100人以上が拘束された。これを受けスターマー首相は、新たな全国的な監視プログラムを発表し、その中で顔認識技術の広範な使用を検討すると述べた。このテクノロジーは、すでに国内のいくつかの警察で使用されている。「これらの暴徒は移動性が高く、コミュニティからコミュニティへと動いている」と首相は述べている。
ロンドン警視庁は、以前から指名手配されている人物を特定するためにリアルタイムの顔認識技術を用いているが、「将来的に犯罪を犯す可能性があると合理的に疑われる個人」に対しても、この技術の使用が認められている。
しかし、この技術の広範な使用計画は人権団体からの反発を受けている。
「首相が発表した顔認識技術の広範な展開は、大量監視に警察のリソースを投入するものであり、民主主義を保護するどころか脅かすことになる」と、ビッグ・ブラザー・ウォッチのディレクター、シルキー・カルロは述べている。「この人工知能(AI)による監視は、市民を歩くIDカードに変える危険なもので法的根拠を欠いている。リアルタイムの顔認識技術は、ロシアや中国では許可されているが、欧州の他の国々は禁止している」と彼は指摘した。
英国の前首相、リシ・スナクは今年初め、今後4年間で顔認識技術に追加で5550万ポンド(約103億円)を投資する計画を発表した。現状でリアルタイムの顔認識技術による監視を常に行っているのは、ロンドン警視庁と南ウェールズ警察のみだが、この技術は7月の英国F1グランプリなどのイベントでも使用されていた。
英紙タイムズの分析によると、2017年にこの技術を用いた監視が導入されて以降に、152人が逮捕されている。しかし、この技術の正確性については懸念があり、黒人が他の人種グループよりも誤認されやすいことが指摘されている。
(forbes.com 原文)