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2024.08.14 15:00

AIチップブームで息を吹き返した小さなスタートアップ、エヌビディアに挑む

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新たに6億4000万ドル(約946億円)を調達したGroq(グロック)は、AI専用に設計されたチップで、世界で最も価値のある企業の1つに挑戦しようとしている。

GroqのCEOで42歳のジョナサン・ロスは、2月にオスロでノルウェー議会議員やテック企業幹部相手にデモを行っていた際に、何かがおかしいことに気がついた。低迷していた会社を活性化させたいと願っていたロスは、そのとき、人間が読むよりも速く、ほぼ瞬時に質問に答えることができるAIチャットボットのデモを行っていた。しかし、どういうわけか、わずかに遅延が発生していた。これはロスを不安にさせた。彼は、超高速な回答を可能にする特殊なチップを誇るGroqが開発したヨーロッパのデータセンターを売り込もうとしていたのだ。「数字を何度も確認し続けました」と彼は振り返る。「なぜ私がそんなに取り乱しているのか、誰もわかりませんでした」

原因は新規ユーザーの急増だった。ロスのオスロでのミーティングの前日、熱狂的な開発者が「超高速AI回答エンジン」を絶賛したツイートが拡散し、オンラインデモに大量のトラフィックが殺到し、同社のサーバーに負荷がかかっていたのだ。これは問題だったが、うれしい問題でもあった。

8年前にGroqを創業した際の、ロスのアイデアは、「推論」に特化したAIチップを設計することだった。推論とは、学習した内容を新しい状況に適用することで人間の推論を模倣する人工知能の一部だ。スマートフォンが、これまで見たことのない写真の中の犬をコーギーと識別したり、画像生成AIがバレンシアガのコートを着たローマ教皇を生成したりすることを可能にするのが推論だ。これは、膨大なモデルを最初にトレーニングするという、AIのもう1つの計算負荷とはまったく異なる。

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翻訳=酒匂寛

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