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2024.08.12 09:45

メタバースで若者の稀少がん患者をつなぐ医療革命

プレスリリースより

小児、思春期、若年期の希少がん(骨肉腫など発生頻度が低いきわめて希な疾患)患者はとかく孤立しがちで、不安を抱えつつ治療に専念しなければならない。こうした人たちをメタバース(仮想空間)でつなぐことができれば、悩みを話し合ったり情報交換ができ、生活の質が向上して治療にも前向きになれる。そんな機会を提供してきた医師が、日本最大規模のメタバースプラットフォームと手を組んだ。

岡山大学学術研究院、医歯薬学域(医)医療情報化診療支援技術開発講座の長谷井嬢准教授は、遠く離れた施設で戦っている、同じ疾患、同じ世代の患者たちが安全に交流でき、体験を共有して孤独感を解消できる場を、2022年から個人活動として提供してきた。これまで、若い希少がん患者やLGBTユースを対象に、12回のメタバース交流会を開いてきたが、メタバースは専門外なので技術的な問題は手探りで対処してきた。そのため、メタバースの活用は「未来の医療改革への波及効果が期待」されるとしながらも、なかなか活動を加速できずにいた。

そこに、累計総動員数2000万人を超える日本最大のメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターが手を差し伸べた。同社の協力により、全国の患者、医師、看護師が同じ空間に集い、話をしたりゲームで遊んだりできるようになった。アバターを通じた匿名の交流なので、悩みを簡単に打ち明けられない子どもたちも「会話がスムーズに進みやすい」とのこと。また、治療が始まったばかりで不安の毎日だったある患者は、この交流会で初めて笑顔になれたという。

岡山大学小児病棟で実施した「メタバース七夕体験」では、入院中で外出できない子どもたちも、VRゴーグルをつけて「満天の星」を眺めることができた。同じ悩みを持つ子どもたちが、メタバースならいっしょに自由に遊べる。それは大変に貴重な体験となるはずだ。

クラスターは7月、長谷井准教授の研究との連携、協力を発表した。クラスターが個人の研究活動と連携するのは初めてであり、「この画期的な協力関係は医療分野におけるメタバース応用の飛躍的な発展につながる可能性を秘めている」と岡山大学は話している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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