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アート

2024.08.15 14:15

イタリア企業のアート展示はなぜ「しっくり」感じられたのか?

アレッサンドラ・キアッピーニの作品

ラグジュアリー領域で評価を受ける事業開発をしようとするなら、パワーポイントに4象限とキャッチフレーズを書いてコンセプトを練るようなアプローチを捨てるべきです。ある限定された市場戦略を決める、または問題を解決するなら有効な方法ですが、新しい価値や意味をつくっていこうとするなら、よした方が良い。

今回、通常であればラグジュアリー領域とは思われない企業を紹介しようと思います。しかし、正直に話すと、その紹介をするにあたり、パワポ的な説明の誘惑に、ぼく自身がのりかかかってしまいました。

その企業のサステナビリティ報告書を読んでいると、記載されているロジックに引っ張られてしまいます。あるいは売上高や競合他社との関係といった情報を仕入れていくと、その企業が業界でどのような位置にあるか? その位置の要因は何か? という分析に傾いてしまいます。ラグジュアリーのロジックからどんどん遠のきます。

しかし、実際に本社工場を見学し、イタリア国内業界の上位グループの一角を占めるこの企業の存在を、多くの人にラグジュアリー文脈で知ってもらいたいという想いが芽生えました。そこで、ぼく自身の経験を語るのが、本稿に相応しいと思うに至りました。まず、事実を書いていきましょう。 

会社名はSAIB EGGERグループです。循環経済の実現が必須とされるなかで注目される企業です。1962年創業のSIABは廃材から素地と化粧の両方のパーティクルボードをつくり、2021年時点で、年商 1億4000万ユーロ、従業員は230人程度でした。

2022年、この業界では世界のトップグループに入るオーストリアのEGGER(2021/22年の年商 約42億ユーロ)にSAIBの60%の株式が買収されます。SAIBにとっては、グローバル展開をするに相応しい美味しい話を逃してはいけない、というオファーでした(突如、EGGERのトップから電話がきて、びっくりしたようですが)。これ以降、SAIB EGGERグループという名称になります。
創業者の写真が社内の壁にかけてある。

創業者の写真が社内の壁にかけてある。

ポプラの根っこや製材作業のあまりをパネル生産に有効利用できないか? と考え始めた女性が製材業を営む父親に相談し、夫と創業したのが同社のはじまりです。したがって、3代目として家業を継ぐクララ・コンティの台詞「わが社にとってサステナビリティはDNA」は言葉通りに受け止めたいです。

同社が大きく飛躍したのは冷戦の終結の契機となった1989年のベルリンの壁の崩壊でした。
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文=安西洋之(前半)・前澤知美(後半)

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