IASJのウィックスも、テスラがカモトの鉱山で行っていると主張する監査が、児童労働の問題の解決策にならないと主張している。なぜなら、そのような監査が抜き打ちではなく、事前に通告された上で実施されており、問題がより多く発生する夜間に行われていないからだという。
「私たちが懸念するのは、監査の基準が明確ではなく、透明性が欠如している点です。テスラの持続可能性報告書に書かれている内容は、見栄えが良いものですが、この問題について懸念する投資家としては、これらの監査の有効性は疑問です」とウィックスは指摘した。
コバルトの価格低下の影響
テスラは、新たなタイプのバッテリーでコバルトの使用量を減らす取り組みを進めていると主張している。また、金属の回収と再利用を増やしており、2023年には117メトリックトンのコバルトをリサイクルしたと報告した。テスラは、年間のコバルトの使用量を開示していないが、レアメタルの需要を追跡する調査会社Benchmark Mineral Intelligenceによると、同社が使用するコバルトの量は、ここ数年、ほぼ変化が見られないという。この背景には、コバルトの価格が過去2年間で半分以下になったことが挙げられるという。
「コバルトの価格が安くなった結果、自動車メーカーにとってコバルトの使用量を削減する取り組みの優先順位は低くなっています。EVの販売台数が伸びた結果、コバルトの消費量は増加しています」とBenchmarkのチーフデータオフィサーであるカスパー・ロールズは述べている。
一方、ニューヨーク大学スターン・スクールのポズナーは、コバルトの鉱山での労働問題を抑制する最良の方法は、テスラのような自動車メーカーとその採掘業者が、その問題がサプライチェーンに存在することを認め、それらを改善する取り組みを進めることだと述べている。
「それらの問題を無視して、そこに関与していないと偽るのではなく、その問題がサプライチェーンの一部であることを認め、子どもたちを採掘現場から遠ざけることが必要です」とポズナーは語った。
グレンコアは、多くの国で零細鉱山が人々の雇用と収入源となっている事実を認識しており、できる限り責任ある方法でその改善を支援していくと述べている。
(forbes.com 原文)