宇宙

2024.08.05 18:30

古代の銀河の残骸と考えられる球状星団に「中間質量ブラックホール」の証拠発見

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した巨大な球状星団「オメガ星団」の中心領域。約10万個の恒星が密集している(NASA, ESA and the Hubble SM4 ERO Team)

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した巨大な球状星団「オメガ星団」の中心領域。約10万個の恒星が密集している(NASA, ESA and the Hubble SM4 ERO Team)

南天の星座ケンタウルス座の方向約1万7700光年の距離にあるオメガ星団(NGC 5139)は、1000万個もの恒星が密集した球状星団で、天の川銀河(銀河系)に取り込まれた古代の銀河の残骸と考えられている。球状星団は、年齢が100億年以上で、主に古代の恒星で構成されると見られている。
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今回の最新研究では、このオメガ星団にブラックホールが存在することが明らかになった。だが、それはただのブラックホールではない。恒星が形成するブラックホールと、銀河の中心にある超大質量ブラックホールとの間の隙間を埋める「ミッシングリンク」的なブラックホールなのだ。

球状星団「オメガ星団」の中心領域の拡大画像。左から枠内を拡大した画像を右に並べている。右の画像の中央に中間質量ブラックホールの位置を示している(ESA/Hubble & NASA, M. Häberle (MPIA))

球状星団「オメガ星団」の中心領域の拡大画像。左から枠内を拡大した画像を右に並べている。右の画像の中央に中間質量ブラックホールの位置を示している(ESA/Hubble & NASA, M. Häberle (MPIA))

ブラックホール

太陽系から約2万7000光年の距離にある銀河系の中心には、超大質量ブラックホール「いて座A*(Sgr A*)」が位置している。3月、世界各国の科学者300人以上が参加する国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、いて座A*の端から渦巻いている強い磁場による偏光を捉えた、目を見張るような最新画像を公開した。2022年には同じEHTチームが、いて座A*を観測史上初めて撮影した画像を発表した。1974年に初めて発見されたいて座A*は、直径約3500万kmで、強力な電波源だ。

オメガ星団で今回検出されたブラックホールは、それに比べるとはるかに小さい。オメガ星団は、銀河系を取り巻くように存在する約150個の球状星団の中で最大で最も明るい。恒星の崩壊によって形成される恒星質量ブラックホールは、太陽の1~数十倍の質量を持つ一方、超大質量ブラックホールの質量は、太陽の数百万~数百億倍にも及ぶ。オメガ星団には、太陽の約8200倍の質量を持つ中間質量ブラックホール(IMBH)が存在することが、今回の研究で明らかになった。IMBHの候補天体はこれ以外に、これまでごく少数しか見つかっていない。
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発見が困難

現行の銀河の進化理論では、最初期の銀河の中心にあった中間質量サイズのブラックホールが、銀河の進化に伴って他の銀河との衝突合体を通じて大型化したと考えられている。そのためIMBHは、発見が困難になっていると見られている。独マックス・プランク天文学研究所(MPIA)などの研究チームが、学術誌Natureに発表した今回の論文では、科学者の間で長年考えられているように、オメガ星団は銀河系に取り込まれた、独立した小型銀河の中心核の残骸であることが示唆されている。つまり、小型銀河の中心のブラックホールが、遠い昔に時間が止まったままの状態で残された可能性があるわけだ。

研究チームはオメガ星団内のブラックホールを検出するために、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した較正用の画像500枚以上を用いて、星団内にある恒星140万個の固有運動のデータを集めた膨大なカタログを作成した。その結果、星団の中心の狭い範囲内で、高速で移動している恒星が7個見つかった。これは、ブラックホールの存在を示す明確な兆候だ。

次の段階では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)と南米チリの欧州超大型望遠鏡(ELT)を用いて、この7個の恒星をより詳細に観測する予定。恒星の軌道がどのように曲がるかを調べることで、恒星がどのくらい加速するかを明らかにする研究を実施する計画だ。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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