経済・社会

2024.08.14 14:15

スタンフォード大日本人コーチが考えた「日本にも絶対チップ制必要」な理由

スタンフォード大学アメリカンフットボール部コーチ、河田剛氏。コーチ業の傍ら、シリコンバレーで日米双方のスタートアップのサポート/アドバイザーを務める

サービスのベクトルはどこに向いているか?


簡潔に言えば、日本のサービスのベクトルのほとんどは「雇用主に向いて」いる。当然と言えば当然であるし、雇用側のマネジメント力も称賛に値する。
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対して、アメリカのそれは100%「カスタマーに向いて」いる。もちろん、チップが欲しいからであることは明白だが、二次的情報をすべて取っ払って、本当に心地が良く受けたいサービスは、そのベクトルが顧客に向いたものであると私は思う。

それに気づき始めた頃、その仮説が検証フェイズに入ってからは、10年以上もかけてその比較を続けてきて出した結論である。

筆者が日本にもチップがあった方が良いと思うのには、もう一つ理由がある。経済的事情である。一部のレポートでは、コロナの給付金の90%が貯蓄に回るような我が国の社会、通常の売上にプラスして15%~25%のお金が世に出ていくことは、停滞している国内の経済にとっては間違いなくプラスである。
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アメリカで飲食業を営む友人に、このトピックについてヒアリングを試みた。店によって、運営会社によって、なにより地方自治が当たり前のアメリカは州によって、ルールは異なるようだが、一般的にチップは、その日の総額をサーバーの総数で等分するそうだ。原則、チップは立派な所得の一部であるので、納税は所得者つまり各サーバーに委ねられる。経営者としては、手が離れてしまった後は、それぞれの責任なので、グレーゾーンではあるが、それに対する経営面での負担は少ないそうだ。

立法と法律の運用は、我が国が好む優秀さ、すなわち「記憶力のよさ」によっても選ばれた人々が中心となって行われている。だから、そこに「グレーゾーン」などは存在しないだろう。例えばアプリ等でチップを渡せるような仕組みを創り上げ運用が進めば、世間により多くのお金が回るようになり、確実に経済活動のプラスになるのではないかと私は思う。

グローバル化が進む中で、我が国のそれやあれと他の国や地域のそれやあれを比べる機会が増えてきた。円安を背景にしたインバウンド景気が進む中、日本を訪れる人々に、「日本の料理や、サービスの質は世界一だ」と言われるし我々もそれを日々感じていることだろう。主観の域を出ないが、素晴らしい!と称賛されるその前後には、ほとんどの場合「安いのに……」という言葉が隠れているはずである。

GettyImages

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メディアでは賃金が上がらないことが常に話題になっているのに、テレビのニュースでは何かの商品が1円値上げしたことが放送されているのに、我が国では、料理、製造品、接客等、Made in Japanのすべてにおいて、年中無休のバーゲンセールがOne Teamで開催されているのである。

そしてそのセールを開催している張本人達は、そのこと、つまり「質/クォリティ」のマネタイズ、価格への反映を怠っていることに気づいていない。円安がそのつけの一部である事を誰も理解していないのである。

我が国の一番の良いところであり問題点である「みんなそこそこ幸せ」がこのようにネガティブに映るのは、筆者だけではないはずだ。

「生き残れるのは、強いもので賢いものでもなく、進化できるものである」

進化論を唱えたチャールズ・ダーウィンの言葉である。稼ぎすぎること、金持ち、(何かをお金に変える)マネタイズ等、経済活動の一部が理由もなく耳についてしまう我が国日本。

「クォリティーのマネタイズ」というカテゴリーにおいて進化できる日は、果たして来るのであろうか? 不安でありながらも、戦後からの高度経済成長期のような急成長を遂げるような姿にも期待したい。根拠はある。マネタイズの元となる「質=コンテンツ力」は、間違いなく世界一なのだから。

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