自動車や家や自転車、さらには決して広くはない私道からちょっとした工具まで……。
これらあらゆるものをシェアすることで、いまや数十億ドル規模の市場ができあがりつつある。より有利な取引と副収入を求めようとする消費者の行動が、ビジネスのあり方自体を変えつつあるのだ。
(中略)
「シェア・エコノミー」においては、会社が所有して人々が消費するという産業モデルは破壊され、誰もが消費者兼経営者になれ、それに伴い現金収入を得られるようになる。
本誌の推定では、シェア・エコノミーの拡大によって人々の懐に直接入る収入は13年に35億ドルを超え、成長率は25%超となっている。こうした高成長により、P2P方式のシェアモデルは単なる賃金が伸び悩む経済状況における収入増の手段ではなくなっている。いまや「シェア・エコノミー」は、爆発的に拡大する可能性がある産業に変わりつつあるといってもいい。
1世紀にわたり消費者と経営者の仲立ちをしてきた新聞案内広告に取って代わる技術は大きく前進した。しばしば模倣されるイーベイ(eBay)の査定システムが、個人に商業的信頼性を与えている。フェイスブックを使えば、賃貸をする前に相手のプロフィールを調べられる。スマホのアプリでシェア希望者はどこでもシェアでき、身近でどんなシェアが行われているかがわかり、その場で支払いもできる。「我々は、所有を中心にした世界から資産へのアクセスを中心とした世界に移行しつつある」と写真シェア・サイト、オーフォト(Ofoto)を立ち上げ、01 年にこれをイーストマン・コダックに売却したリサ・ギャンスキーは語る。
だが、この新しい経済の波に乗ろうとする新興企業の多くは破綻するだろう。というのは、こうした市場では常に勝者は一人勝ちするからだ。当然ながら、リーダー格の企業は小心な規制当局や既存勢力からの攻撃に曝されている。エアビーエンビーは、その合法性を証明するためにニューヨークとサンフランシスコで戦っている。リフトとサイドカーは、無認可営業という理由で最近カリフォルニア公共事業委員会から召喚された。こうしたサービスがどのような税金を課されるのかという大きな問題も、解決されなければならない。
(中略)
シェアは人間の取引本能
経済学者も、こうした経済活動をどう捉えるべきかについて困惑している。「シェア・エコノミーの影響を測るためには新しい経済学が必要になる」と、この現象を研究しているニューヨーク大学スターン・ビジネス・スクールのアルン・スンダララジャン教授は語る。経済学者にとって最大の問題は、こうした活動がすべて新しい価値を生み出すのか、あるいは単に既存の事業を代替するだけなのかという点だ。
答えは、当然ながら両方だ。これは創造的破壊の典型なのだ。短期的には、個人が車を買わなくなるため、経済に悪影響が出るだろう(カリフォルニア大学バークレー校の研究によればジップカーのような企業が使用する車1台に対し、9〜13台の車が買え控えられる)。しかし長期的には経済効率化が達成され、最終的にはみんなの利益になる。(以下略、)