『Dear Sydney』と題されたこのCMは、パリ五輪に出場した米国の陸上競技選手のシドニー・マクラフリン=レヴロンに憧れる幼い娘を持つ父親が、Geminiに娘が同選手に宛てたファンレターを書くのを手伝ってくれるよう頼むという内容だ。
父親は娘を「世界一のシドニーファン」と呼び、Geminiに「シドニー選手の存在が、娘にとってどれほど励みになっているかを伝える手紙を書くのを手伝ってほしい」と頼んでいる。
このCMは子どもたちに「人間にとって大切なスキルをAIに頼ることを奨励している」として、放送の直後から批判を浴びた。一部の視聴者は、このCMが不快で、「AIの最悪で最も悲しい使用例」と呼び、「スポーツ選手や誰かに自分で手紙を書くことの大切さを完全に否定している」と述べている。
グーグルは当初、このCMを「米国の五輪代表チームを祝う本物のストーリー」と呼んで擁護していたが、ニュースサイトAdAgeに寄せた声明で五輪のTV放送での放送を段階的に中止することを発表した。
「このCMを見るたびに、TVにハンマーを投げ込んで壊したくなる。人間の生きる喜びをすべて吸い取るようなことを宣伝するのが、プロダクトを売り込むための良い方法だとは思わない」とワシントン・ポストのアレクサンドラ・ペトリは書いている。
このCMに対する怒りは、日常生活の中のAIの使用についてのより大きな議論の中で生まれた。昨年は、ハリウッドの脚本家や俳優が、映画スタジオによるAIの使用に制限を設けるために抗議行動を起こしたが、AIが人間の仕事を奪うことを恐れる人がいる一方で、AIを人間のパフォーマンスや生産性を向上させるためのツールだと考える人たちもいる。
(forbes.com 原文)